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G・ガルシア・マルケス
ママ・グランデの葬儀

ガイド

書誌

authorG・ガルシア・マルケス
editor桑名一博, 安藤哲行, 内田吉彦(訳)
publisher集英社文庫
year1982
price320
isbn760079-Y

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
2002.8.27読了
2002.8.27公開
2004.10.22修正
2012.1.17タグ追加
2020.2.25文字化け修正

この訳書の刊年を見るとガルシア・マルケスのノーベル文学賞受賞と同年であるから、それに便乗して刊行された本なのだろう。しかし、現在の文庫本の世界を見回してみて、ラテン文学に最も強いといえるのも集英社である。全集を出しているのだから当然なのかもしれないが、こういう意味での他社との差別化はありがたいことだ。

私は特別にガルシア・マルケスが好きというわけではないのだが、やはりラテン文学者として最も著名な名前ではあるわけで、それだけに訳書の文庫化率も高く、必然的に接する機会も多いということである。しかし、一方で思ったのは、これは逆に海外の人が日本の代表的作家の本を読むというとき、過去の日本の文学の系譜に関係なく川端なり三島なりだけを抽出しているようなもので、やはりそれだけでは表層に過ぎないのだろうな――という点である。

なお、一読しておもしろかったのは淡々と恩給の待ち続ける老人を描いた「大佐に手紙は来ない」、殺された泥棒の母親と神父の対話の前後が魅力的だった「火曜日の昼寝」、『族長の秋』 に通じる皮肉な部分を持つ締めくくり方を持った「ママ・グランデの葬儀」だった。

抄録

52

「コーヒーに甘味をつけるものです」彼は大佐に説明した。「砂糖ですが、糖がありません」

「そうでしょう」と大佐は言い、つばがほろ苦い甘さでいっぱいになった。「鐘がないのに鐘が鳴るようなものですな」

199

何事も考えず、立派な死を願うことすら忘れて床に横たわっていた状態がどのくらい続いたのかはわからなかった。実際、一瞬間だけ、彼は本当に死んでしまったかのようであった。だが意識を取り戻したときには、もはや痛みも驚きも感じなかった。彼は扉の下に一筋の青白い光を見た。そして、遠くで悲しそうに鳴く鶏の声を聞いて、自分がまだ生きており、説教の言葉を完全に覚えていることに気がついた。

229-230

ママ・グランデの精神的な所有物。