バルガス・リョサ,パス,オカンポ,アストゥリアス,パチェーコ
ラテンアメリカ五人集
ガイド
書誌
author | バルガス・リョサ,パス,オカンポ,アストゥリアス,パチェーコ |
editor | 安藤哲行(ほか訳) |
publisher | 集英社文庫 |
year | 1995 |
price | 740 |
isbn | 8-760245-1 |
目次
1 | 本文 |
履歴
editor | 唯野 |
2000.5.8 | 読了 |
2000.5.15 | 公開 |
2002.11.28 | 修正 |
2012.1.17 | タグ追加 |
ラテン文学のアンソロジー。ノーベル賞作家であるアストゥリアスとオクタビオ・パスを含む作品が紹介されている。先に本書で収められている作品を挙げると以下の通りである。
J・E・パチェーコ(メキシコ) 「砂漠の戦い」
マリオ・バルガス・リョサ(ペルー) 「子犬たち」
シルビーナ・オカンポ(アルゼンチン) 「鏡の前のコルネリア」
オクタビオ・パス(メキシコ) 「白」「青い目の花束」「見知らぬふたりへの手紙」
M・A・アリトゥリアス(グアテマラ) 「グアテマラ伝説集」
それで読後の感想であるが、最も読み応えのあったのはオクタビオ・パスの作品で、いずれの作品も独特の切れ味があってよかった。ラテン文学というと、リョサかガルシア・マルケスばかりが有名であるけれども、アンソロジーの醍醐味を感じさせるに足る内容だったと思う。それだけに逆にいうと、期待して読んだリョサや冒頭を飾るパチェーコの作品は今ひとつだったように思う。とはいえ、私がラテン文学に感じる魅力としての(うまくいうことはできないのだが)現実と思っていたものがそうではないと分かったときに感じる意識の落差、心の中での浮遊感というかガラスの砕け質感がなくなっていくような感覚というようなものは確かにあって、その意味では十分に楽しむことができたと思う。(むろん、これは逆の場合も同じ。)
他のふたり、オカンポの作品は鏡との対話が物語の主題を成すという意味では技巧を感じさせる一作で、アリトゥリアスの作品は名前の通り、故国の伝説を脚色したという、いずれもひねりの効いた佳作が並んでいる。そうやって考えてみると、どうやら最近は、オムニバスを読むと期待とは裏腹の作品で逆に楽しむという、おもしろいといえばおもしろいが、ある意味ではおかしな読書が多いように思う :-)