ガルシア・マルケス(ほか)
美しい水死人
ラテンアメリカ文学アンソロジー
ガイド
書誌
author | ガルシア・マルケス(ほか) |
editor | 木村榮一(ほか訳) |
publisher | 福武文庫 |
year | 1995 |
price | 700 |
isbn | 8288-5713-3 |
目次
1 | 本文 |
履歴
editor | 唯野 |
2001.6.5 | 読了 |
2001.6.12 | 公開 |
2001.11.24 | 修正 |
2012.1.17 | タグ追加 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
ラテン文学の短編を集めたアンソロジー。考えてみれば短編集を読んでスリリングだったのは久しぶりのような気もする。解説によると、本書に登場するのはラテンアメリカの中でもスペイン語圏の作家なので、厳密にいえばイスパノアメリカ文学というのが正しいらしいが、まあそこまで突き詰める必要はあるまい。巻末には作家群の詳細な解説もあって読者の便が図られており、ラテン文学へ接したことのない人にも確かにおすすめといえるだろう。とはいえ、福武文庫自体が実質的に在庫のみという状況らしいので入手は難しいのかもしれないが...
個人的には表題作は既に 『エレンディラ』 で読んだような覚えがあるし特別な感慨があるわけでもなかったが、本書の半ば辺りに収められているホセ・エミリオ・パチェーコ(メキシコ 1939-)の「遊園地」、フリオ・ラモン・リベイロ(ペルー 1929-)の「記章(バッジ)」、マヌエル・ローハス(チリ 1896-1973)の「薔薇の男」、そして最後のふたつであるアドルフォ・ビオイ=カサレス(アルゼンチン 1914-)の「パウリーナの想い出に」、フリオ・コルタサル(アルゼンチン 1914-84)の「山椒魚」などは一気に読んだ。特におもしろかったのは「薔薇の男」で信心というものの独特のあり方と終わり方で特に印象的だった。他の逆転した視点を描く「遊園地」「山椒魚」、人間以外の独立した人格を扱った「記章」「パウリーナの想い出に」は、いずれも素材のレベルにおいて既にラテン文学的といえるように思う。
あまり文学史的流れであるとか先入観を持ちたくはないので、特に各作家の来歴までをまとめるつもりはない。ただ、アンソロジーなので、上記に取り上げた以外に所収の作品だけざっと紹介しておく。
- アランダ司令官の手 アルフォンソ・レイエス (メキシコ 1889-1959)
- 波と暮らして オクタビオ・パス (メキシコ 1914-)
- 犬が鳴いてないか フアン・ルルフォ (メキシコ 1918-86)
- 生活費 カルロス・フェンテス (メキシコ 1928-)
- カナリアとペンチと三人の死者のお話 ホルヘ・イバルグエンゴイティア (メキシコ 1928-83)
- 包誠(パオ・チェン)による歴史 サルバドール・エリソンド (メキシコ 1933-)
- ミスター・テイラー アウグスト・モンテローソ (メキシコ 1921-)
- 閉じられたドア ホセ・ドノーソ (チリ 1924-)
- 羽根枕 オラシオ・キローガ (ウルグアイ 1876-1934)
- 水に浮かんだ家 フェリスベルト・エルナンデス (ウルグアイ 1902-64)
- 旅行者――一八四〇年 マヌエル・ムヒカ=ライネス (アルゼンチン 1910-84)
# オクタビオ・パスは『弓と竪琴』がちくま学芸文庫で文庫化されていました
# いつ読むのかは全く未定ですが、とりあえず買いました。ちなみにこれは詩論です