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ガルシア・マルケス
族長の秋

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書誌

authorガルシア・マルケス
editor鼓直(訳)
publisher集英社文庫
year1994
price720
isbn8-760235-4

履歴

editor唯野
2000.12.3読了
2001.1.3公開
2002.6.28修正
2012.1.17タグ追加

著者を代表する一大長編。ラテンアメリカでは、その政治性から「独裁者もの」とでもいうべき文学ジャンルが存在するそうであるが、本作はそれらの中でも最も著名なものである。そんなわけで内容も独裁者の孤独と奇行を何から何まで描ききったといってよいものになっており、読者は読後に強い満腹感に襲われるだろう。そうでなくとも、各章が全く段落や改行という切れ間のないままに展開していくというのは、本の下半分が余白になっているような作品に接した後では、視覚的にまず圧倒される。冒頭に「一大長編」と記したのはそういう次第による。それゆえ、一言でいうならば、かなり骨太で、それでいて不思議な様相を見せる物語ということができるだろう。

主要登場人物

大統領 主人公
パトリシオ・アラゴネス 大統領の影武者 cf.36
ロドリゴ・デ=アラギル将軍 腹心の国防大臣、親衛隊長、国家秘密警察長官
ベンディシオン・アルバラド 大統領の母親 cf.61
サトゥルノ・サントス将軍 生粋のインディオの将軍 摩訶不思議なことができる
マヌエラ・サンチェス 大統領の愛人、日食の闇の中に消える
ボニベント・バルボサ将軍 大統領に反乱を起こしたコンデ兵営の指揮官
レティシア・ナサレノ 大統領の唯一の妻だった元修練女
デメトリオス・アルドゥス猊下 エトルリア人のバチカンの審問官
エマヌエル 大統領とレティシア・ナサレノの間にできた子供 cf.215
ホセ・イグナシオ・サエンス=デ=ラ=バラ この国の上流階級の末裔

抄録

36

-/-それよりも閣下、このさい、真実に目を向けられたらいかがです、ほんとに心のなかで思っていることを閣下に言った人間は、一人もいないんですよ、みんなが、閣下が聞きたがっているなと思うことを口にする、閣下の前ではぺこぺこし、後ろではアカンベエをしている、-/-

39

-/-一方、人目につかぬところに隠れた大統領は、当惑しながらこうつぶやいていた、いったい世の中、どうなってるんだ、嘘にもせよわしが死んだというのに、なんにも変わらんじゃないか、-/-

58

-/-ところが、その死のうわさがより確実なものに思われれば思われるほど、大統領はますます精力的で威光にみちた姿を、ひょっこりわれわれの前に現わし、予期していなかった方向へわれわれの運命をねじ曲げた。-/-