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ホルヘ・ルイス・ボルヘス/アドルフォ・ビオイ=カサレス
ボルヘス怪奇譚集

ガイド

書誌

authorホルヘ・ルイス・ボルヘス/アドルフォ・ビオイ=カサレス
editor柳瀬尚紀(訳)
publisher晶文社
year1976
price1200
isbn0097-2231-3091

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
2011.04.27読了
2011.05.08公開
2011.05.08修正
2011.05.11修正
2011.08.16修正
2011.09.12修正
2012.1.18タグ追加
2020.2.25文字化け修正

ボルヘスとカサレスによる短編のアンソロジーである。「物語の精髄は本書の小品のうちにある、とわれわれは自負する」と断言できるのは私などには恐ろしいとしか思えないが、ボルヘス御大なら許されるのかも...といえなくもない。実際にも外れは少なく下手な短編集などよりはるかにおもしろい。以下に若干抄録として取り上げる。

抄録

28

ある男が物語を書いているが、それが自分の意図に反した形をとる。登場人物たちは自分の考えたのとは別の行動をする。予測しなかった出来事が起こる。そして、彼がむなしくも避けようとつとめる悲劇的大詰めが到来する。それは彼自身の宿命のきざしを示すらしい――彼は作中人物のひとりとなってしまったのだ。――ナサニエル・ホーソーンのノートブックに散在するテーマ(ナサニエル・ホーソーン『ノートブック』)

31

「おまえは実際に鹿を殺し、それが夢だと思った。それから本当に夢を見て、それが真だと思った。もうひとりの男は鹿を見つけ、いまおまえと争っているが、しかしその男の妻は彼が誰かほかの者が殺した鹿を見つけた夢を見たと思っている。ようするに、誰も鹿を殺してはいない。しかしこの目の前に鹿がいるのだから、いちばんよいのはふたりで分けることだ。」

この判決は鄭の王の耳に届いた。鄭の王はこういった。

「その判事じゃが、彼は鹿を等分している夢を見ているのではないか ?」――隠された鹿(『列子』)

40

とある戦で、アリは敵を倒し、その胸に膝をついて乗りかかり首を撥ねようとした。相手は顔に唾を吐きかけた。アリは立ちあがると、男を放してやった。どうしてそんなことをしたのかときかれて、彼は答えた。