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カネコアツシ
デスコ 全7冊

ガイド

「生」とは「死にかけ」のことです

書誌

authorカネコアツシ
publisherKADOKAWA
year2014 (1巻)
price680+tax
isbn978-4-04-7299672

目次

1本文

履歴

editor唯野
?読了
2020.5.2公開
2020.5.4修正

殺し屋漫画の紹介が続いていますが深い意味はありません。が、『Ordinary±』 より、(当然ですが)はるかに大人向けです。殺し屋に分かりやすい理由ではなく理不尽さを求めるのであれば、こちらの方がはるかにおもしろいです。

非合法の「ギルド」によって一般人も含んで構成された「リーパー」と呼ばれる暗殺者集団。その中でかつて凄腕だったマダムM、そして彼女から全てを受け継いだ「デスこ」が主人公です。もちろん、ありきたりな理由でデスこはマダムMと一緒にいるわけではありません。もちろんデスこもリーパーである以上に、マダムMを然るべきときに殺すために共にいるからです。この世の全てが嫌いなデスこにとって、それがいつになるのかは実際に読んでいただくとして、最終巻には次のようなページがあります。

7巻 p.199

もちろん、この種の表現は目新しいものではなく、この読書ノートでいえばカルペンティエルの『失われた足跡』の一節などそのままでしょう。

そして、死とは死ぬのを、やめることであり、誕生とは、死に始めることである、そして、生とは生きながら死ぬことである――ケベート『夢』

生そのものが既に死にかけだというのは確かに正しいといえます。無意識に我々は死をもっと特別なもの、今のような高齢化社会にあっては先延ばしして考えがちであり、世の中は生への讃歌(とその誇張)であふれています。ゆえに、それを謳歌するための「健康」や「長寿」も大きな関心事となる。そもそも、それ以前に資本主義においては「死」だって相対化されています(*1)。

しかし、少し斜に構えただけで、それさえもが「死にかけ」となるわけです。ことに今のような社会においては、そこを少しでも立ち止まってみることは無駄ではないように思います。

もっとも、この漫画もエンターテイメントである以上、引用したページに続く部分は少しひねくれたオチになっていますが... まあ、それでも十分刺激的ですし、モノクロを強調した絵柄もよく合っていると思います。

*1 カイヨワ『聖なるものの社会学』