エリック・リース
リーン・スタートアップ
ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす
書誌
author | エリック・リース |
editor | 井口耕二(訳)、伊藤穣一(解説) |
publisher | 日経BP社 |
year | 2012 |
price | 1800+tax |
isbn | 978-4-8222-4897-0 |
履歴
editor | 唯野 |
2016.7.8 | 読了 |
2020.2.3 | 公開 |
2020.2.11 | 修正 |
タグ
- リーンスタートアップ
リーン・スタートアップの本家本で、現在ではリーン・シリーズと銘打った関連本も出ている。リーン・スタートアップとはスタートアップ企業の失敗を減らすために、起業プロセスにトヨタの改善方式を取り入れ、「構築-計測-学習」のサイクルを回しながら必要に応じてピボット(方針転換)することを指している。要はスタートアップ企業といえども(だからこそ)成長と成功のためには変化を受け入れる必要があり、そのためには根拠となる計測、根本となる仮説が必要で、それをMVP(最小限度の製品)で行なうことにより、リソースの限られたスタートアップ企業のリスクを少しでも減らす方法論ということになる。
PDCAに近いといえば近いし、その意味でこのサイクルを起業プロセス以外に応用させることも可能である。そういう観点であれば起業家でなくても読んで得るところの多い本だと思う。ビジネス書で他人の成功例や経営哲学を学ぶのもよいが、結局のところ実際の課題に対する取り組みに勝るものはない。本書では、改善を前提としたサイクルを回し続けることでそれを目指しており(=成功率を高めリスクを減らす)大変ためになった。シリーズ本を読んでいるせいもあるが、現在の私にも割と大きな影響を与えている。
なぜかというと、この考え方が根本にあると、例えば営業やマーケティングといった個別の本を読んでも、それに固執することがなくなり、ひとつの手段として捉えることが可能になる。ポリシーとしての一貫性が必要な場面はもちろんあるが、何かを絶対視するのではなく相対的なものとして部分的に取り入れる、相手に応じてやり方を変えるといったことが可能になり、失敗も怖くなくなる。もちろん、それは仕事であってもプライベートであっても同じことだ。個人の抱える課題は人によって違う。同じ課題でも人によって重要度、影響度は異なる。そういう状況で他人の成功例は一例でしかなく、ただ真似ても意味はない。しかし、実践してみて自分に効果のあるものを取り入れる、失敗したものはやめる、そして自分用に最適化(=改善)できれば、それは大いに意味がある。
スタートアップ企業にとどまらない考え方を提供してくれている点で本書は大変優れているし、だからこそ評価されてシリーズ本も出ているのだと思う。ちなみに、本書が気に入った方であれば、シリーズ本として『Running Rean』も合わせておすすめする。
# 実は読書ノートとして公開済と思っていたらしていなかった本...
抄録
9-10
こういう夢を強力に売り込む人々がいるが、それは一部のみを取り上げた後講釈であり、鵜呑みにしてはいけない。私は何百人ものアントレプレナーと仕事をしてきたが、その結果、順調な滑り出しから失敗するケースを数多く見てきた。それどころか、現実は、スタートアップのほとんどが失敗するのだ。新製品のほとんどが成功しない。ベンチャーのほとんどが実力を発揮できずに終わる。
10-11
アントレプレナーとして10年あまりの経験を積んだ結果、私は、こういうふうに考えるのはまちがいだと思うようになった。自分自身の成功と失敗から、また、ほかのアントレプレナーたちの成功と失敗から、おもしろくないことこそが大事なのだとわかったのだ。スタートアップは遺伝子が優れていれば成功するものでもなければ適時適所で成功するものでもない。正しいやり方で進めるからこそ成功するのだ。それはつまり、やり方を学べるということであり、また、やり方を教えられるということでもある。
起業とはマネジメントの一種である。読みまちがいではない。「起業」と「マネジメント」はいずれもさまざまな意味で使われる言葉だが、最近のイメージは、一方はかっこよくて革新的、もう一方は退屈・まじめで刺激がないというものだ。そういう先入観は捨ててしまおう。