織本 篤資
和式ナイフの世界
火・鋼(てつ)・技が生む切れ味の秘密
ガイド
ナイフというよりは小型打刃物全般を扱った本

書誌
author | 織本 篤資 |
publisher | 並木書房 |
year | 1994 |
price | 2200 |
isbn | 4-89063-058-9 |
履歴
editor | 唯野 |
2025.10.5 | 読了 |
2025.10.8 | 公開 |
書名にナイフとあるが、国内鍛冶による打刃物を扱った本であるため、小刀、包丁、鉈など幅広い刃物が登場する。安来鋼、玉鋼、研ぎなども説明があり、そういう意味ではよくまとまった一冊である。
もっとも30年前の本であるため、登場する名工も既に他界している方ばかりであり、その辺は少々残念ではある。ちなみに個人的に興味深かったのはサンカが使ったとされるウメガイという刃物を復刻させた話で、わずかな写真などから一方を鈍角、他方を鋭角にすることで一本で多様な用途に対応させた辺りなどはなるほどなと感じた。
道具は使ってこそのものであり、古くから大工道具など良い刃物ほど使われて刃は減るために、名工の刃物ほど残らないとされているが、この種の刃物も同様なのだと思われる。
抄録
15
日本のカスタム・ナイフは、現状では、一流、二流を問わず、アメリカン・ナイフのひき写し、といって悪ければ、下敷き仕事、文体模写の域を出てはいない。-/-
16
カスタム・ナイフに代わって、このところにわかに見直されているのが、和式ナイフである。前者のような華やかさはないが、比較的廉価で、よく切れ、研ぎやすく、扱いやすい道具としての優秀さに、改めて光が当たりはじめたのであった。
和式ナイフに使われている炭素鋼は、手入れが悪ければ、錆が発生する。研いで使い、使って研ぐのが和式ナイフの基本である。このような使い方が、かえってナイフの道具としての本質を理解させ、ナイツを使う愉しみを教えてくれることにもなった。
和式ナイフの特徴は、軟らかい鉄を土台にして、そこに鋼を抱かせたり、薄く貼り合わせたりする点にある。-/-
17
刃物に使われる鋼材には、いずれも利点が欠点になり、欠点が利点になる矛盾を内包している。よりよい切れ味を求めて硬度を上げれば、モロくなり、硬度を下げれば、靭性(ねばり)は高くなるわかりに、切れ味は低下する。-/-