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菱木 政晴
浄土真宗の戦争責任

ガイド

短いがよくまとまっており良書

書誌

author菱木 政晴
publisher岩波ブックレット
year1993
price350
isbn978-4-00-003243-7

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
2025.7.10読了
2025..公開

戦後80年だからといわけでもないが、本棚で読まずに眠っていた本を読んでみた。明治の近代化はむろん、第二次大戦に至る歴史を読み解く上で国家神道はもっと勉強しないといけないと思っているが、なかなかそんな余裕もなく時間ばかり過ぎてしまっている。

とはいえ本書は短いながらも内容が濃く勉強になった。ここでは主に真宗大谷派から見た戦争協力の経緯を真俗二諦論などから解説しており、国家神道の浸透に国内仏教の協力があったことが述べられている。特に、幹部が政権中枢にも入り満鉄経営にも携わるなど、戦争協力が国に強制されたのではなく半ば自発的に行われてきた辺りは極めて興味深い。宗教が弾圧を経て普及するのはキリスト教はもちろんのこと浄土真宗でも同様であるが、真宗においては真俗二諦論の俗諦によって世俗権力への追従が歴史の中で容認なり妥協されてきた━━というのも分かりやすい説明である。以前に読んだ『ヒトラーの抬頭』でも触れられていたように、「ファシズムを初期に支持したのは現状に不満を持つ普通の人々だった」という点は、トランプ2.0を支持しているのが誰なのか、などと合わせて考えると、ますますうなずけるところではある。

岩波ブックレットも久々に読んだが、文庫よりも短いこの手の本をもっと読まねばと改めて思った。

抄録

2-4

第一に、過去の罪障を懺悔するというは、過ぐる大戦においてわれらの宗門が、「強き者は弱きを伏す。転(うた)た相剋賊(あいこくぞく)し殘害殺戮(ざんがいせつろく)して迭(たが)いに相呑噬(あいどんぜい)す」〔浄土真宗の根本経典である『大無量寿経』からの引用で、争いの悪を説いたもの〕という第一の悪に自ら加担し、それを「聖戦」と呼び、「まったくおおせにてなきことをも、おおせとのみもうす」〔親鸞の語録『歎異抄』からの引用〕罪を犯したことであります。

実に、五逆謗法(ごぎゃくぼうほう)〔『大無量寿経』で最大の罪とされていること〕の咎(つみ)逃れがたく、今更(あらた)めて全戦没者の悲しみを憤念しつつ、ここに真宗大谷派が無批判に戦争に加担した罪を表明し、過去の罪障を懺悔いたします、(後略) (真宗大谷派、全戦没者追弔法会における「表白(ひょうびゃく)」〔法要や儀式に際して仏前にその趣旨を読みあげる文のこと〕、一九九〇年四月二日)