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立花隆
宇宙からの帰還

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書誌

author立花隆
publisher中公文庫
year1985
price580
isbn12-201232-5

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
1999.spring読了
2000.1.x公開
2000.3.24修正
2020.2.25文字化け修正

「2001 年宇宙の旅」に出てくるモノリスではないが、宇宙を知ることが限られた人間のものになっている現代では、やはりその経験は強烈なものとして当人にも影響を与えるようである。本書はそういった「宇宙を識る」ということに伴う個人の内面的な変化を追った野心作である。意外にも宇宙飛行士たちの宇宙の旅のその後を追った作品は少ないらしく、それだけでも本書は興味深い内容になっている。特に初期の宇宙飛行士が *典型的アメリカ人* から選ばれていたなどという下りはとてもおもしろかった。ジョン・グレンが史上最年長で宇宙飛行をしたということ、それが本人だけではなくアメリカという国にとってどういう意味を持つのか――そういう社会的な側面を知ることができるからである。

また、宇宙的な思考(?)という脱常識的な発想の数々にも驚かされた。というのも、宇宙から見た地球、地球以外の概念というものの捉え方は、何よりも「宇宙」が我々の普段に抱いている固定観念を吹きとばす場所なのだということを如実にものがたっているからである。つまりは、我々がエイリアンというとき、それは宇宙から見れば地球人もれっきとしたエイリアンの一種なのだというような発想である。そして、宇宙ではそれが肉体的・精神的なものを含める全的な意味でのカルチャーショックだからこそ、強烈なインスピレーションや発想の転換を引き起こすのだろう。もちろん、本書には逆に「宇宙に行ったからといって何かが変わるわけではなかった」という事例も紹介されているが、太古の昔からそうであったように宇宙が人類における精神的な意味でのフロンティアとして今もあり続けていることは確かなようである。

抄録

10/11

人間は真空では呼吸ができない。これは、酸素があっても気圧がないと酸素が肺胞膜を通過できないため。また、気圧が下がると沸点が下がるので、人間の体温でも沸騰の起こるという問題もあるため。

17/18

地球での時刻というものは地球から見た天体運行の影響に基づく(外部から影響を受ける)ものであるから、それは常に修正を加えていかなければならないものということができる。そして、時間の関係が適切でなければ、地球と宇宙船との連絡を適切に行うことができない。

21-24

宇宙飛行は実質的に慣性飛行であるから、エンジン点火時の姿勢と燃焼のタイミングが航行の大きなポイントを握る。しかしそのための位置の算出は常に誤差の修正が必要とされる。加えて、修正中の間にも宇宙船は動いているので、それを見越した修正が必要になる。そのため、宇宙船と地球との間での時間の同期は、「打ち上げ後時間」という共通の尺度を使うことが多い。発射前のカウントダウンが、そのまま発射後にはカウントアップされ、打ち上げ後時間となるのである。