遥洋子
東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ
ガイド
書誌
author | 遥洋子 |
publisher | ちくま文庫 |
year | 2004 |
price | 620+tax |
isbn | 4-480-42021-5 |
履歴
editor | 唯野 |
2007.6.14 | 読了 |
2015.4.4 | 公開 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
私はテレビを見ないので著者がタレントと紹介されていても名前さえ知らないが、上野千鶴子の本なので読んでみた一冊である。本書では著者が上野千鶴子に学ぶ過程を通じて、フェミニズム、社会学、そしてタイトルにもあるような「ケンカの仕方」についてが述べられている。
もちろん、社会学を扱う以上、その権威への疑いのまなざしは「東大」という場所そのものにも向けられるのだが、それをタイトルとしても銘打っているところが「利用できるものは利用する」気概というべきなのか「権威の再生産」なのかといわれれば、双方なのだろう。というよりも、それこそが「権威」というものの持つ一側面だからである。
これは言い換えるとフェミニズムが解放しようとするものにおいても同じことがいえる。私から見て本書が優れていると思えるのは、そういうフェミニズムを阻む権威へ疑いのまなざしが、国民国家という権威に対しても広がりを持ってくる点でだった。
ある社会問題を単体で捉えられるほど物事は単純ではなく、同種の痛みや問題の広がりというものにどこまで理解を広げられるのか――これは難しいことなのだけれども、そういう理解を助けるためにこそ社会学は有効利用されるべきだと私は思う。だから、この本を読んでケンカに勝つのは真の目的ではない。「勝つ」よりも先の地平を見ましょうよ、さらに賢くなりましょうよ、ということなのだ。
抄録
24
「なんで ? なんでとどめを刺しちゃいけないんですか ?」
「その世界であなたが嫌われ者になる。それは得策じゃない。あなたは、とどめを刺すやり方を覚えるのではなく、相手をもてあそぶやり方を覚えて帰りなさい。」
私は鳥肌が立った。やっぱ、本物だ、と思った。
「議論の勝敗は本人が決めるのではない。聴衆が決めます。相手をもてあそんでおけば、勝ちはおのずと決まるもの。それ以上する必要も、必然もない。」
33 cf.133
しかし、「わからない」がこれほど相手に脅威をもたらす言葉であるということは大いなる発見だ。
著者はこれを「開き直りの理論」といっている。
37
「私は、何もわからないことを、わかったような気になってしまうことのほうがよっぽど」
と言葉を止め、はっきりゆっくり言葉にした。
「コワイ。」