高野文子
高野文子作品集
絶対安全剃刀
ガイド
書誌
author | 高野文子 |
publisher | 百泉社 |
year | 1982 |
price | 980 |
isbn | 760016-Y |
目次
1 | 本文 |
履歴
editor | 唯野 |
2004.10.24 | 読了 |
2004.10.28 | 公開 |
2004.10.29 | 修正 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
及ばずながら高野文子という人の名前は知っていたけれども、これまで本を読んだことがなかった。「それでは駄目でしょう」といわれて読んでみた本だが、確かにおもしろい。
ただ、何度かパラパラと読み返しているうちに、この本に似合うのは「おもしろい」というより「ものすごくうまい」という言葉なのではないかと思い至るようになった。特に物語の対象に対する距離感が、付かず離れずというか、自分のことであるように見えてそうでなく、他人行儀に見えてそうでないという、読者から見て微妙なバランスを持ったものになっている点が挙げられる。そして、それは私としても共感のできる距離感でもある。
ただ、この距離感覚は一方では――物語の自分への置き換え、対象への冷めた視線、特徴的な終わりの受け入れ――といったものに対するもどかしさとしても現れることになる。それゆえ、結局のところ、本書がおもしろいかどうかはそれらを含めて受け入れることができるかどうかという点に集約されていくように思うが、本書の作品群が 80 年代初頭に書かれたことを考えれば、熱のないことがひとつの主張となりえた部分である種の必然性を感じるのも事実ではある。
いい方を変えると、これらは計算され尽くした短篇の持つ魅力としても映るように思う。しかし、私としては、素直にそういうもどかしさの含めたものをおもしろさにつなげられるという意味で、やはり「うまい」という言葉が最も近いと思う。
# ほかに『棒がいっぽん』という本を読みましたが、
# こちらはコロボックルの話がおもしろかったです。