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芥川龍之介
侏儒の言葉・西方の人

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書誌

author芥川龍之介
publisher新潮文庫
year1968
price220
isbn10-102507-X

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
2004.9.22読了
2004.10.1公開
2004.11.15修正
2020.2.25文字化け修正

芥川の最後に属する作品を収めた本。「侏儒の言葉」は遺稿となったものであり、「西方の人」が最後の、そして「続 西方の人」が彼の自殺する直前に書かれた作品となっているためである。今の私の年齢にして既に芥川が自殺していたことを考えると、彼のすごさが改めて実感されるが、やはり彼のような人を天才というのであろう。

「西方の人」はキリストを扱ったものであり、死の直前に書かれたというところからしても、芥川が自身をキリストに重ねていた部分があったのは事実だと私も思う。それゆえかどうかは知らないが、割と独創的なキリスト像が描かれており、それはジャーナリストとしてのキリストという視点などに現れている。

とはいえ、個人的には私も警句を好む点で(好む点だけが同じである)「侏儒の言葉」の方がおもしろかった。

抄録

10 鼻

こう云う我我の自己欺瞞はひとり恋愛に限ったことではない。我我は多少の相違さえ除けば、大抵我我の欲するままに、いろいろ実相を塗り変えている。たとえば歯科医の看板にしても、それが我我の目にはいるのは看板の存在そのものよりも、看板のあることを欲する心、――牽いては我我の歯痛ではないか ? 勿論我我の歯痛などは歴史には没交渉であろう。しかしこう云う自己欺瞞は民心を知りたがる政治家にも、敵情を知りたがる軍人にも、或は又財況を知りたがる実業家にも同じようにきっと起るのである。わたしはこれを修正すべき理智の存在を否みはしない。同時に又百般の人事を統べる「偶然」の存在も認めるものである。が、あらゆる熱情は理性の存在を忘れ易い。「偶然」はいわば神意である。すると我我の自己欺瞞は世界の歴史を左右すべき、最も永久な力かも知れない。

11 修身

道徳の与えたる恩恵は時間と労力の節約である。道徳の与える損害は完全なる良心の麻痺である。

17 小児