吾妻ひでお
失踪日記2 アル中病棟
書誌
author | 吾妻ひでお |
publisher | イースト・プレス |
year | 2013 |
price | 1300+tax |
isbn | 978-4-7816-1072-6 |
履歴
editor | 唯野 |
? | 読了 |
2020.4.26 | 公開 |
2020.4.26 | 修正 |
2020.5.2 | 修正 |
2020.5.22 | 修正 |
書名の通りアル中病院に入院してから退院するまでの間を描いた本。話としては前作『失踪日記』の方がインパクトがあっておもしろいですが、もちろんこちらも十分おもしろいです。著者は昨年お亡くなりになりましたが、はっきりいってこの2作が代表作となってしまった感があります。
ルポルタージュであるとかノンフィクションというジャンルがありますが、実際に自身がホームレスやアル中となってしまった上に、それを作品――それも漫画――にしてしまうというのがすごいです。普通はノンフィクションがいいところであって、どちらも好んでなる人などいないでしょうから、それだけでも貴重というかすさまじさがあります。昨今ではネタに困った漫画家が自分自身をネタにすることも珍しくありませんが、それらとも一線を画しているのは確かです。特に実際に体験しなければ分からないであろう箇所が小話まで含めて登場するので、ものすごいリアル感があります。恐らくほとんどの人が読み始めたら一気に最後まで読んでしまうのではないでしょうか。
今は新型コロナウイルスで日本でも感染拡大まっさかりですが、Webなどでは実際に感染した人の手記などもちらほらあり、それらも似たような読後感があります。ついでにいっておくと、安倍政権が感染拡大を抑止できないであろうことは、これまでの政治の結果を見れば自明ではありますが、こういう人たちを含めた社会的弱者への迅速な支援ができないことも、医療崩壊と合わせて同じくらい問題でしょう。
要は内田樹が コロナ後の世界 でも述べているように、それもこれまでの政治の「成果」だということです。森友・加計・桜を見る会のいずれも首相は問題に正対せず、自分に都合のよい結果を望みさえすれば官僚からマスコミまでがその通りに動いてくれた。長期政権でそれが当たり前となり慣れてしまったがゆえに、今回のコロナでも自分の希望的観測がその通りになると思って楽観視した。結果、ワーストケースを想定した具体的な手立てを何ら打たず、島国であるとともに有していた時間的アドバンテージを生かせなかった。
そもそも事態をまともに把握できていないからこそ、コロナが収束していないのにオリンピックの日程だけ延期したり、犬とたわむれる動画を配信できるわけです。悲しいことに、それらの方が首相にとっては重要だったということです。問題に対して事後の対応だけでうやむやにしてきた人物に、事前の対応など望むべくもない。リアルタイムの亡国に付き合わされるのは勘弁してほしいものです。
# なんか読書ノートが政権批判の文章になってしまった...