橋爪大三郎
政治の教室
ガイド
書誌
author | 橋爪大三郎 |
publisher | PHP新書 |
year | 2001 |
price | 660+tax |
isbn | 4-569-61845-6 |
履歴
editor | 唯野 |
?.3.9 | 読了 |
2014.8.20. | 公開 |
納得できるところとそうでないところが両方あった本。とはいえ「社会学者が政治について説明しようとするとこうなるのか」という意味での分かりやすさはあると思う。どうせなら権威と権力の関係などについても突っ込んで欲しかったが、本書の主眼はあくまでも「現代の日本人が政治的な関心をもっと持つにはどうするべきなのか」であるので、そういう社会学寄りな話題にはそれほど触れられていない。
それで個人的には、著者のいう選挙制度としての小選挙区制と二大政党制の推進などには疑問を感じている。というのも、日本の場合、自民党の対抗馬とされる民主党も元をたどれば自民党であって、政策面で差別化されているとは言い難く、単に相手のミスと支持率低下を待って政権交代しているに過ぎない感が強いためである。二世議員の多さも辟易するが、私はもっと政治家にこそ公約に対する成果主義が導入されるべきだと思う。公約に対する達成率が一定以下なら再立候補できない(=引退)くらいのペナルティを課さないと、安易に公約を覆したり(そういえば自民党は消費税増税も反対だったのでは ?)、政界再編と称して主張の異なる政党に乗り換えたりということは減らないだろう。
とはいえ、著者は単なる現状分析に留まらず、改善のための具体的な施策にまで言及しており、この辺は評価に値する。単なる意見の主張や問題点の指摘だけなら新聞の社説でもできる(という程度しか今の私はマスコミには期待していない。)恐らく、この問題の根を追っていくと、著者が本書の前半でやっているように、そもそもの民主主義というものをどういうかたちとしてであれ、突きつめて考えてもいなければ教わってもいないというところに、たどり着くのではないかと思う。関心を持ったこと自体がないものについてをいきなり考えろということを、酷だと捉えるか、そこを含めたところが民主主義の主権者の義務だと考えるか、それこそが一番の問題ではないかと思うのだが...
抄録
4
そうなのだ。政治はあなたの手の届くところにある。ごくふつうの人びとが、どんどん政治に加わるべきだし、政治家に力を貸すべきだ。なにも手を動かさず、なにもコストを払わないでいながら、政治がよくないと文句を言っても、なんの足しにもならない。もちろん政治がよくなるはずもない。
15
しかし他方で、社会科学には、自然科学にない特徴がある。いったん法則性がみつかっても 、それが、歴史的・文化的な条件によって変化するのです。ある時代や文化のもとで正しかった法則性が、別の時代や文化のもとでも正しいとは限らない。
18
業界をつくると 、それは誰の利益になるか。その業界で安穏に暮らしている「専門家」たちの利益になるだけです。-/-要するに最近の社会科学は、業界の内側でしか通用しない、「学問のための学問」となってしまっているのです。