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向井 領治
考えながら書く人のためのScrivener入門[ver.3対応 改訂版]
小説・論文、レポート、長文を書きたい人へ

ガイド

エディタを任意に分割しアウトライン・プロセッサにもなる長文製作支援ソフトのMac向け解説本

書誌

author向井 領治
publisherビー・エヌ・エヌ新社
year2021
price3,080+tax
isbn978-4-802511575

目次

1本文
2抄録
3306

履歴

editor唯野
2021.5.26読了
2021.5.27.公開

元々、私の場合は長文用というよりは資料用(RTFの多数の文書をアウトラインでメモなども含めて整理したい)という目的で見つけたソフトである。類似のソフトは以前から探しておりRightNoteなども使ってみたが、久しくOnenoteの代わりになるものはない状況だった。そこでVer3本が出ていたので試用しながら通読してみた次第である。

Scrivenerは本来イギリスのソフトウェアであり、最大の特徴はエディタ画面を自由に分割し他の文章や資料を参照しつつ文章を書けること、アウトラインやカードを含めて文章を自在に細分化・結合できるのでトップダウンだけでなくボトムアップからの構想を練りながらの作文がやりやすいところにある。通常のテキストエディタやワープロソフトでは単一の文章しか扱えないが、作者だけの設定資料を含めた周辺部分まで扱えるのが強みである。草稿から他フォーマットでの出力まで行うことができ、細かく自分用や出力先に応じた設定をすることもできる。

具体的に本書が扱っているのはMac版 3.1である。私はWindows版の3.0.1を使用したが確かにメニューの日本語化は極めて中途半端でありMac版も誤訳があるようなので、英語のままの方が分かりやすい箇所も少なくない。また、本書で紹介されている日本語メニューがWindows版ではそもそも一致していない箇所も多く、書名は「for Mac」の補足があってもよかったように思う。

加えて、そもそもMac版が先行開発されWindows版とはバージョンが異なるせいもあるが、Windows版(3.0.1)では少なくとも私が把握した範囲で、縦書き表示やコンパイル用フォーマットのテストに非対応、メニューにショートカットキーが割り当てられていない(例えば[Alt+F]でファイルメニューが開けない)、デフォルトでは日本語入力するとスペルチェックされて赤破線付になる([ファイル]-[Options]-[Corrections]タブ-[Spelling]の[Check Spelling as you type]を外す)、当然ながら辞書ツール類も日本語非対応、コピーホルダを使用しても分割されずロックっぽい動作になる――などUIを含む細かい違いが目についた。

そのため多少は使い続ける勇気というかトラブルに対処できるITリテラシが要求される感じである。もっとも個人的には部分的でも日本語化されているだけましだと思うので、上述の不具合自体はそれほど悪いとは思っていない。また、そういったノウハウ自体をScrivenerの資料で整理していくのも一興だろう。

むしろ著者も触れているようにベースが英文用であり本格的な日本語の禁則処理などには非対応なので、やはり執筆用と割り切って仕上にはInDesignなどを使う流れになる。言い換えると文章作成の上流工程を包括支援してくれる部分に、どこまで価値を見い出せるかということになる。

上述したように個人的には資料整理が主目的だったとはいえ、いうまでもなくそれらの資料も最終的には何らかのアウトプットのためのものではあるので、自分でも出口から逆算した使い方を実際に一度やってみたいと思った。

補足

この文章は常用のテキストエディタ(WZ Editor 10)で書いている。アウトラインだけならWZにはWZ Boardがあり、WZ10は.textという形式で画像も扱えるものの、これまた一長一短である。本書に登場するインタビューイの方も言及してるように、結局のところツール探しはよりよいものを求めて継続的に続けていくしかないのが正解なのだろう。

抄録

46

基本画面は3ペインで左からバインダー(アウトライン)、エディタ、インスペクタ(参照)となる。WindowsならバインダーはShift+Alt+B、インスペクタはCtrl+Shift+Alt+Iで表示をオンオフできる。

47

変更は自動保存(標準で2秒)される。バックアップの詳細はオプションで指定できる。