西郷隆盛
西郷南洲遺訓
附 手抄言志録及遺文
ガイド
書誌
author | 西郷隆盛 |
editor | 山田済斎(編) |
publisher | 岩波文庫 |
year | 1939 |
price | 400+tax |
isbn | 4-00-331011-X |
履歴
editor | 唯野 |
?.8.9 | 読了 |
2012.1.6 | 公開 |
2012.1.7 | 修正 |
2012.1.10 | 修正 |
2013.6.8 | 修正 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
西郷隆盛の遺訓や『言志四録』からの抄本、その他の文章を集めた本である。非常に薄いのだが、文章が漢文読み下しだったり、旧かな遣いだったりするので、読み進むのには時間のかかる本であった。書かれていることはさすがというが、私のような俗人とは比べるのも失礼というかすばらしい。
ただ、西郷の一生を考えてみたとき、往々にして高潔すぎる人物が俗世の中で生き残るのは難しいという命題にぶつかる。むろん、これくらいの人になると、自分の考えが受け入れられない境遇も承知の上なのだろうし、更に進んでその結末にも自ら納得がいっているのであろうが、その境地がなかなか達し得るものではないのも自明である。即ち、聖人君子の世界に到達した人間ゆえの悩みというかジレンマなのだと思う。
# なお旧字や旧かな遣いは適当に改めている。
抄録
6
四 万人の上に位する者、己れを慎み、品行を正しくし、豪奢を戒め、節倹を勉め、職事に勤労して人民の標準となり、下民其の勤労を気の毒に思う様ならでは、政令は行われ難し。然るに草創の始に立ちながら、家屋を飾り、衣服を飾り、美妾を抱え、蓄財を謀りなば、維新の功業は遂げられ間敷也。今と成りては、戊辰の義戦も偏へに私を営みたる姿に成り行き、天下に対し戦死者に対して面目無きぞとて、頻りに涙を催されける。
7
七 事大小と無く、正道を踏み至誠を推し、一事の詐謀を用うべからず。人多くは事の指支(さしつか)える時に臨み、作略を用て一旦其の指支を通せば、後は時宜次第工夫の出来る用に思え共、作略の煩い屹時生じ、事必ず敗るるものぞ。正道を以て之を行えば、目前には迂遠なる様なれ共、先きに行けば成功は早きもの也。