岡崎京子
リバース・エッジ
River's Edge
ガイド
書誌
author | 岡崎京子 |
publisher | 宝島社 |
year | 1994 |
price | 1,000 |
isbn | 7966-0825-7 |
目次
1 | 本文 |
履歴
editor | 唯野 |
1998.2.0x | 読了 |
1998.9.14 | 公開 |
2002.11.28 | 修正 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
岡崎京子の描く90年代の若者の姿。本書の帯にはこう書いてある。「 死もセックスも愛もすべて等価な透明な「無」のなかで再生される 私達の新しい「リアル」」と。現代人で病んでいない人などいないように、異常が正常となった若者の世界では、何が悲劇を生みそれがどういう顛末をたどるのか... 多分、現在の漫画の世界でそれを不条理の中のものとして答えを見出しているのが岡崎京子であり、そしてそれはそれゆえにこそリアリティを獲得することに成功している。なぜなら「きれいごと」の通用しないことを誰よりも分かっているのが、そこに在る彼ら/彼女ら自身であるからだ。それゆえに、本書が連載当時から大きな反響を呼んだのもうなずけるだけの衝撃性の強い作品である。少なくとも私にとってはそうだったし、その意味で明らかに今年に読んだ本のベスト3には入るだろう。現代の若者を語るときに本書を読まずして語ったとしても片手落ちのような気持ちにさせる一冊である。
本書にはとにかくこれでもかというくらい、フツーでない人々が登場する。いじめは日常茶飯事だし、それが何の違和感を感じさせることもなく淡々と描かれている。抑圧のもたらす裏返しの行為に始まり自閉症、ホモから自意識過剰まで何でもありだ。逸脱だって嫌悪の対象ではなく、かっこいいのである。でも、彼らにも同じように時間は流れ、同じように生活空間があり、同じように学校がある。そこにおける奇妙な仲間意識。奇妙な肉親関係。その齟齬がもたらす悲劇... そして、主人公の秘密。救いがあるとすれば、それはそこでの悲劇にも原因とそれに至るものがあるということだろうか。192ページには、こういう活字体だけの箇所がある。
惨劇はとつぜん
起きる訳ではないそんなことがある訳がない
それは実に
ゆっくりと徐々に
用意されている
進行しているアホな日常
たいくつな毎日の
さなかにそれは――
そしてそれは風船が
ぱちんとはじけるように
起こるぱちんとはじけるように
起こるのだ
多分、この手の作品はこれから増えてきそうな気がする。でも、少し前に週刊金曜日を読んでいたら浦沢直樹の『MONSTER』は「理由のない殺人の物語」なのだと書いてあった。まあ、それを鵜呑みにするつもりはあまりないが、いずれにしても漫画の世界がそういうところまで来たのか...といわれてみれば、妙な納得感が個人的にはある。それは、いわゆる(対象年齢として想定される)若者の物語が...という意味においてである。なぜなら、答えのない世界では、理由の有無など重要なことではなくなってくるからだ。そこまで殺伐とした世界に旧来の絵本のような世界で太刀打ちすることは無理だろうなとつくづく思う。