諸橋轍次
乱世に生きる中国人の知恵
ガイド
書誌
author | 諸橋轍次 |
publisher | 講談社学術文庫 |
year | 2001 |
price | 900+tax |
isbn | 4-06-159514-8 |
履歴
editor | 唯野 |
? | 読了 |
2012.4.24 | 公開 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
書名に「乱世」とあるものの、読んでみるとそれほど乱世だからどうこうという内容ではない。著者の考える中国人の性向を、中国の思想史と歴史に絡めつつ述べた本という方が正しいと思う。中国古典の言葉なり乱世の故事成語だけを引っ張ってきて現代のビジネスの指針にしようとするような本よりはましだと思うが、強く印象を与える本かというと、あまりそういう感じはしなかった。
私は著者の『中国古典名言事典』が大好きなので(これ一冊だけで中国古典を網羅できてしまうすばらしく重宝する本である、下手な中国古典一種類を選ぶくらいなら私は本書を選ぶ)、中国古典の泰斗の本という期待があって読んだのが、その意味では少し肩すかしを喰らった感じだった。
抄録
22-23
老子のことばに、「民、死をおそれずんば、いかんぞ死を以てこれをおそれしめん」というのがあります。死んでもよいと考えている人に対しては、殺すぞといっても、それはなんのおどしにもなりません。戦いに負けることをあたりまえだと考えている国民(中国人:唯野中)に、どうして勝つことができるでしょうか。これを相手に戦争するほどむだなことはありません。
24-25
蒙古に行くと、何十頭のラクダをひとりの牧童がムチ一本であやつっています。実に漫々的ですが、その間、彼らは動物の中にとけこんで、いつかしら、その習性を会得するらしいのです。この、本人が意識するかしないかわからないうちに、大きな成績を勝ちとる、これが他の民族には見られない、中国人の大きな知恵であり、力だと思うのです。
27-28 cf.154
-/-中国の人びとは、問題にぶつかったばあいに、けっしてその問題にそれ自身に局限しては考えない。近ごろのことばでいうと、次元を一つ飛び越えて、高いところからものを見ていく特性をもっています。わたくしどもは問題にぶつかると、とかく、それにまっしぐらにぶつかる。これはいい点もあるが、またある見方からすると、ひじょうな欠点にもなります。