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なだいなだ
人間、この非人間的なもの

ガイド

書誌

authorなだいなだ
publisherちくま文庫
year1985
price450
isbn4-480-02022-5

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
?.1.5読了
2018.6.19公開
2018.6.26修正

いかにも著者らしいというか、著者のスタイルの良く出ている本。断定的でなく、重い語り口でもないが、我々が見過ごしがちなものの見方をそれとなく突いてくる内容となっている。我々が普段から何の疑問も持たずに使っている、人間的、もしくは非人間的という言葉を通じて、無意識のうちに我々がどういう判断をしているか、そういう言葉を使うことでどういう結果が生まれているか、なかなか深くは考えることのないのが実情であるが、本書ではそれを掘り下げている。定期的にこういう本に接することが大事だと思わせる一冊である。

抄録

7

なるべく軽く書きましょう。軽く書いても、あなたを軽くみているわけではないのです。重々しくなど書けないのです。重々しく書けないのは、書く気にならないからです。どうして、日本では重々しく、評論が書かれるのでしょう。私は、むかし、ある批評家に、「軽い」という批判をあびせかけられたことがあります。しかしもっと軽く書こうとしている人間にとっては、充分に軽くないことがとがめられるべきなのです。こう書いておけば、お前のエッセイは軽すぎるという非難はまぬがれることができるでしょう。私は、言葉を、事物の重みから解放したい。だから、軽く書きたいのです。

11

-/-人間的という言葉は、人間の認識の深さに従属するものであるべきだと思われるのに、その言葉は、人間の認識の深まりとともに深められようとするどころか、すでに最初の地点から、その認識と切り離され、人間はかくあるべしという希望と結びついたまま、凍結してしまったのでした。人間的なものというイメージが、あるがままの人間から離れて作りあげられてしまったのです。

さらに、困ったことは、人間的という言葉は、いい言葉なのでした。この、いい言葉というのが、くせものなのです。