前田正子
無子高齢化
出生率ゼロの恐怖
書誌
author | 前田正子 |
publisher | 岩波書店 |
year | 2018 |
price | 1700+tax |
isbn | 978-4-00-002233-0 |
履歴
editor | 唯野 |
2020.5.12 | 読了 |
2020.6.7 | 公開 |
なかなか衝撃的な内容の本。出生率低下に伴う少子化や超高齢化社会の到来は知っていても、その現実の未来のインパクトまではなかなか想像できない人が多いと思う。もちろんそれは私も含めてである。本書を読むと公共サービスそのものの維持も難しくなる未来について具体的に触れられているが、実は本書の与えるインパクトは二重にある。
それは、そういう未来が既にほぼ不可避だという現実である。なぜなら、仮に今すぐ出生率が上がったとしても今後50年以上に渡って人口減少は避けられず、少数の現役世代が圧倒的多数の高齢者を支えなければならないことが、現在の人口構成からも避けられないからだ。これが統計の示す確実な未来である。当たり前であるが今年生まれた出生児数から20年後の成人数、現在の晩婚化などに伴う更なる出生率の低下という悪循環はそう簡単に変えられるものではない。
そうなれば日本の財政も(既に破綻しかけているけど)確実に破綻するだろうし、今現在も出生率は下がり続けている以上、事態が好転する兆しもないわけで、これは既に警世の書というよりは予言書に近い。
著者がp142において、
長年著者は、「子育て支援にもっと資源を」と言い、多くの批判を受けてきた。そのたびに言ってきたのは、「みなさんの周りにいる子どもたちは、日本の将来を支える人たちになります。その子たちが十分な教育も受けられず、ちゃんと働くこともできなければ、世の中全体が停滞し、みなさんの生きる社会がよくなりません。子どもたち全体の底上げは、みなさんの将来をよくすることでもあります。他人の子どもは私たち社会のこどもでもあるんです」ということだ。
と述べている通り、この問題を解決するには子供を産みやすくするための若年世代への経済的支援、特に非正規雇用への対策を掲げているが至極まっとうな意見だと思う。国家百年の大計を立てるのが政治の本来の役割だと思うが、何の対策も打たずに時間だけが過ぎてしまったツケはあまりにも大きい。もっと多くの人が読むべき本だと痛切に感じた。
抄録
v-vi
いま、日本の少子高齢化がすさまじい勢いで進んでいる。二〇一八年の敬老の日に発表されたデータによると、日本の高齢化率は二八・一パーセントと世界最高比率を記録し、今後もどんどん上がっていくことになる。なにせ一〇〇歳以上の高齢者が七万人を超えているのだ。
二〇一六年、ついに日本で生まれる出生児数は一〇〇万人を切り、約九七・七万人となった。二〇一七年の出生児数はさらにそれを下回る九四・六万人であったが、亡くなったのは一三四・四万人である。つまり、二〇一七年には人口は約四十万人減少しており、それは毎日約一一〇〇人が日本から消えていたことになる。
実は話はそれでは終わらない。
少子化が進むとともに、毎年約五〇〇校もの小中高校が廃校になっている。すでに出生児数ゼロという自治体も出現してきている。少子化がここ何十年も続いているということは、それだけ社会を支える現役世代が減り続けている、ということである。-/-人口減少を上回るスピードで現役世代が減り続けているのだ。
-/-これまであたりまえだと思っていたさまざまなサービスは、人手不足で今後は維持が難しくなってくるだろう。
さらに農業者の高齢化もすさまじい。-/-