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早川謙之輔
木工のはなし

ガイド

書誌

author早川謙之輔
publisher新潮文庫
year2003
price476+tax
isbn4-10-138031-7

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
2004.6.13読了
2013公開
2020.2.25文字化け修正

木工家で本まで書く人というのは、かなり限られる感じがするので読んでみた。しかし、一般の人向けに割と噛み砕いた感じが強くて、それほど突っ込んだ話題は出てこない。そのため個人的にはそれほど満足できなかった。

ある分野のプロの人が何かを書く場合、その対象が一般の人も含めるのか、同業者に限るのかで、かなり話題・語彙も変わってくるのは承知できるのだが、逆にそれを意識させながら読ませてしまう――というのは、著者が気を遣い過ぎなのか、それとも私がくだらないことにこだわり過ぎるのか。ただ、いずれにせよ、文章のプロだと、その辺をはじめから感じさせもしないのだろうなと思った次第。

抄録

11-13

付知から見た裏木曾の檜材について。尾州檜と東濃檜の差は同じ檜であるものが樹齢150年くらいから木曽檜の特性として違いになってくるのだとの引用がある。

16 cf.27

-/-使う材は、百年、二百年たった木から取ったものがほとんどである。あたりまえのように使っているが、天産物は人の都合で生産をふやせるものではないのだから、手にする材がどんなに貴重なものか、考えずにはいられない。大切に使いたい。

26

長い乾燥の間も、加工して品物に仕上げてからも、木はある時はおとなしく、ある時はあばれ、いずれにしても呼吸を続ける。木の狂い、割れ等は、木工をしている者にとって、どうにも頭の痛いことだ。-/-

だが、割れ、狂いを生む木の生命力こそ、他の素材と異なる大きな素晴らしい力であろう。使い込んだ机の天面、廊下板の光、障子の腰板。手入をしないで荒れているにせよ、使われた歴史が木に織りこまれて行く。手入をすればしただけそれに応えて光沢が増す。ただし、その輝きをいま願っても、急に得ることはできない。静かな長い時間に、徐々にそれは進む。-/-