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筒井康隆
ロートレック荘事件

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書誌

author筒井康隆
publisher新潮文庫
year1995
price438+tax
isbn10-117133-5

履歴

editor唯野
2003.3.30読了
2003.10.18公開
2003.10.23修正

筒井康隆の書く推理小説。実は解説でも触れられているように何でもやってしまう筒井康隆ではあるが、推理小説と呼べる作品は実はほとんどない。私も本作以外で思いつくのは『富豪刑事』くらいである。(ちなみに『富豪刑事』の方はというと、富豪な刑事による富豪ならではの捜査手法という、とてもユニークかつおもしろい本なので強くおすすめである。)

一方、本書の方は『富豪刑事』に比べると、そのドタバタぶりがおもしろいというよりは、より広い意味でのエンタテイメント性を感じさせるものになっている。つまりはそれだけ推理小説以外としての要素が多分に含まれているということだ。そのため当然ながら謎解き云々に比重があるというような、普通の推理小説(?)を期待するはお門違いである。逆にいうと、推理小説としてだけではくくれない豊饒さをさらっとまとめ上げてしまう辺りが、やはり著者の非凡なところというか老練なところというか、そんな感じを抱かせるできになっている。

主要登場人物

重樹 おれ、人気の画家、障害を負っている<!-- 犯人で三人の令嬢を殺す -->
工藤忠明 重樹の親友、文化人類学の助教授
浜口修 映画で失敗し金策している<!-- 寛子と恋仲になる -->
木内文麿 ロートレック荘の主人
木内彌生 木内氏の妻
木内典子 文麿の一人娘<!-- 重樹を好いている -->
牧野寛子 典子の同窓生、サラリーマンの娘
立原絵里 典子の同窓生
五月未亡人 絵里の母親、資産家
馬場金造 ロートレック荘の使用人
錏(しころ)和博 木内氏の会社の社員
渡辺 県警の警部

抄録

215-216

ところが、同じ筒井作品でも、推理小説の場合には、こうした『戦う筒井康隆』の姿が浮かんで来ません。推理小説を書くとき、恐らく、筒井さんは読者を楽しませようということだけを考えている。つまり、SF やブラックユーモアなどとは、執筆の動機、目的が違っているのです。私が『特殊な性格』と言ったのは、そういう意味です。