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なだいなだ
くるい きちがい考

ガイド

書誌

authorなだいなだ
publisherちくま文庫
year1986
price520
isbn480-02054-3

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
2000.10.3読了
2001.1.6公開
2001.2.22修正
2020.2.25文字化け修正

普通や常識というものが持つ怖い側面を知る上において、かなりの好著。解説は上野千鶴子で、この組み合わせもよいと思う。その解説で「なだいなだ」とはスペイン語で「無そして無」という意味であることが述べられているが、なるほど「そういわれてみれば著者らしさの感じられる言葉の意味だな」と思った。いずれにしても、こういう概念を正面から考えることの重要性は今更いうまでもないことなので、万人におすすめのできる一冊だと思う。

抄録

13/61

-/-ぼくたちは、おとなしく受身で、診察室で待っているのさ。家族や保健所や警察官がクルッテイルと思って連れてくるものだけを診察しているんだ。つまりクルッテイルと判断するのは連れてくる人たちの方だよ。-/-

クルイの範囲を決めるのは精神科医ではなく社会の側であり、またそうでなければならないのだということ。

15

ぼくは、ああ、ここに誤解があるのだな、と思った。医者は病気をなおすのが仕事だと思われている。そして、医者がなにかをすれば、それはどんなものもみな治療だと考えられてしまう。しかし、治療費という名前がつかなければ、ぼくたちは、なにをしても報酬をもらえないから、どんなものにも、そういう名前をつけているだけなのだ。じつは、医者のところに連れてこられる人は治療費を払ってくれるお客さんである。医者はお客さんを病人と呼ぶだけなのだが、人々は、それを病気の人間と一般化してしまうのである。

17

医者とのところに持ち込まれるのは(殊に精神科医の場合)病気というよりは葛藤といった方が正しい。