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久野収
世界を見つめる

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書誌

author久野収
publisher自由国民社
year1995
price1,700
isbn426-30500-4

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
2001.5.30読了
2001.6.25公開
2002.8.22修正
2020.2.25文字化け修正

久野収も既に故人となり(白玉楼中の人 ?)、こういうのを読むと感慨の方が先に走ってしまったりするのだが、まあ感慨ばかりでは、この場合かえって故人に対して失礼というものだろう。内容的にはこの人の特徴ともいえる対談が大半を占めているが、新聞への寄稿や週刊金曜日での文章などもあり時期を伺わせるものになっている。全体からいえば「鋭いな」と思う一方で、部分的には「少しステレオタイプでは ?」と思わざるを得ない箇所もあり、やはり年齢が関係しているのだろうか。(例えば宮崎勤への見方など、この辺は筒井康隆の方がはるかにいいことを書いている。)

しかし、私も本当のところをいうと、以前よりこの人の『対話史』という分厚い本こそ先に読まねばならぬと思っているのだが、思っているだけで時間ばかり過ぎており実に情けない。偉そうなことをいう以前の問題だなあ――というのが結局は最後に頭をよぎったのであった。

抄録

8

民族と民族主権主義(ナショナリズム)の問題は、第一次世界大戦後の世界の青写真として、米国のウィルソンとソ連のレーニンがともに提出した〝民族自決〟主義に従って、処理されてきたといってよい。

11

アメリカの哲学者、G・H・ミードが言うように、歴史は現在から絶えず過去を見直す営みです。新しい現在が生まれるたびに、過去の意味も変わる。ミード的意味での歴史の回顧がこの五十年あまり行われてこなかった。過去の歴史を過去のままで保存したがる力と歴史を忘れて現在だけに生きたがる力が有力であって、両方が新しい現在という立場から歴史を捉え直す作業を困難にしている。-/- cf.57

14

-/-生物学者クラーチュによると、人間は環境への適応能力では特殊環境にははまらない、ディレッタントで拙劣だったから、逆に巨大な大脳皮質を利用し、環境への適応をやめて、環境を自分の欲望に適応させようと方向転換した。つまり全生物の進化の逆の方向をとった。環境を自分に適合させる大脳皮質の奴隷、それが近代文明であるという。-/-