三谷龍二
木の匙
ガイド
書誌
author | 三谷龍二 |
publisher | 新潮社 |
year | 2005 |
price | 1,600+tax |
isbn | 10-300191-7 |
履歴
editor | 唯野 |
2007.7.17 | 読了 |
2007.10.9 | 公開 |
2007.10.9 | 修正 |
木工家としても有名でクラフトフェアまつもとにも発足当初から関わっている人の本。まあ、なんというか私の読感としては俗気が全くないというか、浮世離れしているというか、そういう印象だった。非常に繊細でいて詩的、それが文章にも表れているという感じである。そういえばちょうど今日読んでいた『言志四録』にも、そのときの気持ちや心のありようが書かれた文字へ表れるのだというような箇所があったが、その通りなのかもしれない。
何かに似ていると思っていたら中勘助の『銀の匙』に似ているのか...内容の美しさが。
抄録
2-3
それは仕事をさぼって、今まで行ったことのない町までちょっと足を延ばした時の気分に似ているかも知れない。知らない町を目的もなくブラブラ歩いていると、不思議な浮遊感が生まれてくる。日常から意識が離れ、眼に映る物事は新鮮に、そして次第にこころも透明になるのだった。見知らぬ町で過ごす無為な時間は、それが脈絡なく突然であればあるほど、僕にとっては価値ある時間に変わる。「わからないもの」は、ぽっかりあいた空白の時間みたいで、わからないから、心地いいのかも知れない。cf.104
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塗装について。
30
何気なく歩いていた通り道で、咲いている野の花に気づく。「この時期には、ここにこんな花が咲くんだ」、そんな風にふだん見過ごしていたものに気づくということ、それもつくるということなのだ。机の上で考えるより、さまざまな暮らしのなかで「こんなものがあるといいな」と、気づいたものをつくる。無から有をつくり出すのが創造ということならば、すでに世の中にあったものに「気づく」ということは、なんと言うのだろう。