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一般社団法人 ZEH推進協議会(編)
健康・快適なZEHのつくり方
工務店と設計者の新常識

ガイド

ZEHの包括的な解説書だが実務家向けの箇所が秀逸

書誌

author一般社団法人 ZEH推進協議会(編)
editor荒川源、今泉太爾、小山貴史、金田真聡、小林直昌、高橋彰、書場貴之、松尾和也
publisher学芸出版社
year2019
price2800+tax
isbn978-4-7615-2695-5

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
2022.3.16読了
2022.4.18公開
2022.7.20修正

ZEH関連の本だが(一社)ZEH推進協議会(編)ということで概論なども含めて包括的ではあるものの類書と重複する箇所も多い印象だった。

そのため個人的には、3章の松尾氏が書かれている、実務家向けとなるポイントをまとめた部分が最もためになった。もっとも、これも氏の他書での主張と重複する印象が強いものの、対象がはっきりしている分、要点がよくまとまっていると思う。

特にp127の以下の一文などは非常に共感できるもので、この辺だけでも読む価値がある。

例えばドイツだとこのような選択自体(デザインを取るか性能を取るか:唯野注)が存在しない。国が高いレベルの最低基準を設けているからだ。-/-これは根源まで突き詰めると国が国民の幸せよりも住宅業界団体の声を優先したからに他ならない。とはいえ、それを嘆いていても何も始まらない。住宅を購入しようとする方は自衛の意味も込めて、正しい知識を身につけた上で正しい選択をしなければ、健康、快適性、経済性の全てにおいて自己責任という非常に冷たい状況である。

ZEHに限らず既存住宅を含めた高気密・高断熱化は避けられない流れだと私も思うが、それを進めるためには、それが建築業界の活性化にもつながるという視点がやはり重要ではないかと思った。

抄録

33

こうした寒冷地におけるZEHの課題はやはり低日射、積雪、断熱の3点である。

具体的には、そもそも低日射な上に積雪もあるため、太陽光発電による創エネがあまり期待できない。また、大容量のパネルを載せたくても除雪や落雪の危険性を考えると到底無理である。さらにZEH実現のためには、日射や積雪の問題があるので、躯体の断熱性能は基準以上を備えておきたい。

こうした山積みの課題を解決するためには、まず日射と積雪を考慮し、敷地に合わせた屋根形状の検討を十分に行うことが重要だ。次に躯体の高性能化の検討である。そして、最後のポイントとして、ファイナンシャル・プランニングを含めた施主への提案を行うことが挙げられる。徹底した躯体の高性能化によって上がってしまったコストに対し、LCC(ライフサイクルコスト)の観点から長期的なコストバランスを整えることは、性能とコストの両面で納得してもらうために大事な取り組みだ。

p.32

p.33

36