ますむらひろし
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ジャリア
ガイド
書誌
author | ますむらひろし |
publisher | 偕成社 |
year | 2000 |
price | 1,000+tax |
isbn | 3-014820-4 |
目次
1 | 本文 |
履歴
editor | 唯野 |
2002.7.28 | 読了 |
2002.7.30 | 公開 |
2002.9.17 | 修正 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
ますむらひろしといえば、宮沢賢治の漫画化作品か『アンダルシア姫』という全 3 巻の本を強くお勧めする。前者なら文庫にもなっているし、後者は――まあ既に絶版でもおかしくないが、古本屋で見つけたなら間髪入れずに買っても惜しくはない本である。そうでなくても『銀河鉄道の夜』はアニメ映画になったこともあるし、冬ならシチューの CM に出てくる猫を書いている人(?)といってもよい。
私はこの人の本で特徴的なのは常に人間の五感に訴えてくるところではないかと思っている。特に音楽の登場する比率が高い。もちろん、本から音が聞こえてくるわけではないので、それは読者が想像し思い描く音の調べである。(例えば、鉱物たちの奏でる音楽と聞いてあなたはどんな音と旋律を想像しますか ?)そして、そのような本というメディアの制限を逆手に取った手法が、物語自身のリズムともなる心地よい効果を生んでいる。そうやって捉えてみると、この人の作品に登場する音楽の旋律、誰しもが持つ幼かった頃の思い、鉱物や植物との対等な対話などは、みんな同じ延長線上のもの、即ち五感に訴えているものであるように感じるのである。
そして、これは他の漫画家の作品に比較してみることで一層明らかになる。つまりは登場人物(人間)よりも、それを取り巻く世界の不思議さ、本の中で奏でられる旋律の方に重きのあるイメージということだ。そうやって考えてみると、初めからそういうものをテーマにしたような作品を除くと、なかなかこの種の作品は珍しいのではないかと思うのである。
さて、誉めてばかりでもあれなので、最後に苦言を一言。それは最近の作品(『アタゴオルは猫の森』など)では各話の終わりが少々うっとおしい。或いは押し付けがましいというか、教訓めいているというか、そういうイメージである。せっかく言外の部分を読者の手に委ねているのだから、妙にメッセージ性だけが最後に残っても蛇足というのは言い過ぎだろうか。というのも氏の作品は上述の点だけでも十分魅力的であり、その以上のものを必要と感じさせないだけの完成度があると思うためである。
# なんだか一般論しか書いてない :-)
# 言い換えると、この本そのものの内容はいまいちだったのです...