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桑原武夫(編)
一日一言
―人類の知恵―

ガイド

書誌

author桑原武夫(編)
publisher岩波新書
year1956
price150
isbnIn-262

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
2001.7.9読了
2001.7.30公開
2001.8.4修正
2020.2.25文字化け修正

桑原武夫 + 京大人文研による古今東西の言葉を集めた本。おもしろいのは言葉といっても主として少し長めのものが収められており、しかも言葉だけではなく詩や絵画まで収録されている点である。また、書名からも分かるように一年 365 日、日付ごとに項があり、ほぼそれぞれの日にゆかりのある人物を配した取り上げ方になっている。そのため、この本は単に人類の足跡としての言葉を幅広く取り上げたというだけでなく、ひねりの加わったものになっている。

とはいえ、編者を反映してか登場する人物的には社会改革者、ありていにいえば左翼系の人物が多い。しかし、これも毛沢東などが存命の時代の本であるから、これはこれで時代を反映しているということなのだろう。私なんかが読むと逆に新鮮に見えてしまう部分がある。例えば、当時ならもっと有名だったのかもしれない社会改革者の名前などを見ると、「編者は何を基準としてこの人物を取り上げたのだろうか」などと考えてしまうからである。

それゆえ、むしろあまりに最大公約数的な人選(むろん突き詰めれば、それだって時代に左右されるのだが)よりも、こういう本でさえ時代を反映できているというところに大きな興味を持った。要するに時を置いて接する側としては、それもひとつのとっかかりというか、接点になりえるのだな――ということである。

抄録

1/5 夏目漱石

日本の現代の開化を支配している波は西洋の潮流で、その波を渡る日本人は西洋人ではないのだから、新しい波が寄せる度に自分がその中で食客(いそうろう)をして気がねをしているような気持になる。新しい波はとにかく、今しがた漸くの思いで脱却した旧い波の特質やら真相やらも弁(わきま)えるひまのないうちに、もう棄てなければならなくなってしまった。……こういう開化の影響を受ける国民はどこかに空虚の感がなければなりません。またどこかに不満と不安の念をいだかなければなりません。……我々のやっている事は内発的でない、外発的である。これを一言にしていえば、現代日本の開化は皮相、上滑りの開化である。(現代日本の開化)

1/8 ガリレイ