荒俣宏(編)
大都会隠居術
書誌
author | 荒俣宏(編) |
publisher | 光文社文庫 |
year | 1996 |
price | 680 |
isbn | 4-334-72320-9 |
履歴
editor | 唯野 |
2007.09.21 | 読了 |
2011.11.20 | 公開 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
まずいっておくと本書は序文が秀逸である。「隠居」という言葉をネガティブにではなくポジティブにとらえた説明がされている。その上で、そのための教則本(?)とすべく、その後に過去の文人たちの著作を列記する――という体裁になっている。正直なところ、私には早過ぎる本だと思ったが、読み応えは十分あった。人生を終わりから逆算して考えるというのも、ひとつの生き方、見方には相違あるまい。
抄録
13
老人になるとは、要するに心朽ちることであります。
世のありさまの裏おもてをすべて知りつくし、もはやいかなる対象に対しても青春の活きいきとした夢を託さぬことであります。現世のあらゆる部分で実行されている厳密なルールをもった人生ゲームから、あっさり降りてしまうことであります。
そして、
そのあとにようやく心静かな自由が訪れる。生きながら死んでいることの喜ばしさよ。まるで、浮世のわずらいから解き放たれた幸福な魂のように。
13-14
いやそれどころか、わが日本では、自らすすんで心朽ちた老いの境地に至るための習俗があったのであります。何を隠そう、これすなわち、
隠居
であります。