雨宮処凛
生きさせろ !
難民化する若者たち
ガイド
本書が刊行されてから15年を経てなお何ら問題は解決していない
書誌
author | 雨宮処凛 |
publisher | 太田出版 |
year | 2007 |
price | 1300+tax |
isbn | 978-4-7783-1047-9 |
履歴
editor | 唯野 |
2022.7.19 | 読了 |
2022.7.20 | 公開 |
著者自身を含む就職氷河期世代を中心としたフリーターに関する問題を、当事者へのインタビューなどを交えた現状から、ネオリベラリズムなどに絡めた原因までを問い、こういう社会的弱者こそ自己責任論を否定し生存権をもっと主張すべきだと説いた本。刊行当初に話題となった本だが今さらながらに読んだものの、もっと早くに読むべき一冊であった。
とはいえ一読してより強く思ったのは、本書が刊行されて15年を経てもなお何ら問題は解決していないという事実である。というよりも問題はさらに放置され深化しているというべきであって、安倍元首相を暗殺した山上も煎じ詰めれば同じ問題の被害者である。彼に関しては統一教会絡みのことが最もいわれているけれども、同じくらいフリーターとしての社会的弱者としての立場も議論されなければ片手落ちだろう。そういった問題の解決には何ら触れることなく国葬などと言い出し、反対する意見のあることを認めないなど、それこそ民主主義の否定でしかないことになぜ気づかないのであろうか。
抄録
5
我々は反撃を開始する。
経済至上主義、市場原理主義の下、自己に投資し、能力開発し、熾烈な生存競争に勝ち抜いて勝ち抜いて勝ち抜いて、やっと「生き残る」程度の自由しか与えられていないことに対して。
フリーター二〇〇万人、パート、派遣、請負など正社員以外の働き方をする人は一六〇〇万人。いまや日本で働く人の三人に一人が非正規雇用だ。二四歳以下では二人に一人。なぜか ? それは若者に「やる気がない」からでも「だらしない」からでも「能力がない」からでもなんでもない。ただたんに、企業は金のかかる正社員を雇いたくないからだ。好きなときに使い、いらなくなったら廃棄し、それによって人件費を安く抑え、利潤を追求したいからだ。-/-
6
なぜ、こんなことになったのか。本書で詳しく触れるが、九五年、日経連が明確に宣言したからだ。これからは働く人を三つの階級に分け、多くの人を使い捨ての激安労働力にして、死なない程度のエサで生かそう、と。つまるところ、国内に「奴隷」を作ろうという構想だ。-/-
7
過労死寸前で連日一五時間以上働かされる名ばかりの正社員がいる。
そんな過酷な労働条件を経験から、また友人知人の話から知り、「働かない」という「賢明」な選択をすれば、「ニート」と分類され、「役立たず」と罵られる。