光瀬龍
百億の昼と千億の夜
ガイド
書誌
author | 光瀬龍 |
publisher | 角川文庫 |
year | 1980 |
price | 660 |
isbn | 4-139505-4 |
履歴
editor | 唯野 |
2000.1.3 | 読了 |
2000.3.2 | 公開 |
2004.4.2 | 修正 |
物理的に考えたときの、この宇宙全体におけるエントロピーの減退・熱的エネルギー死をテーマにした日本の SF を代表する一作。小説のみならず漫画版も有名で、かくいう私も漫画の方で先に接しているのだが、今でもそれを初めて読んだときの興奮は鮮明に覚えている。そんなわけで個人的には「漫画の原作を読む」というよりは「漫画と何が違うのか」という辺りに一番の関心があった。
結論からいうと、こちらもおもしろい。まあ、一般に映画にしても原作の方がおもしろいことが多いので、その意味では期待通りだったのだが(逆にいえば、それだけ萩尾望都はすごいともいえる)、読み手を物語に引き込むストーリーのできといい完成度の高い作品だと思う。あえてどちらか一方を選べといわれれば、まあ私としては(どうしても漫画版の印象が強いので)漫画の方を人に勧めてしまうだろうが、まあこの作品は誰にでも勧められる外れのない作品だと思う。
物語の世界
おりおなえ(プラトン) アトランティスの執政官
オイローパ アトランティスの次官でオリオナエのブレーン
セイム エルカシアの長老
グラディウス プラトンの私設秘書
オリハルコン 巨大なエネルギーを蓄えることのできる金属 cf.361
シッタータ(悉達多) 釈迦国の王子、スッドーダナ王の子 cf.128 婆羅門たち
老ウッダカ カピラ城の親衛隊長
梵天王 ブラフマンのこと cf.157
あしゅらおう(阿修羅) 梵天王と戦う少女 cf.397
弥勒(MIROKU) 56 億 7 千万年のちの末法の世に人類を救済する仏
cf.168/172/391
ピラトゥス イスラエルのローマ総督
セイント ピラトゥスの部下
ナザレのイエス 予言者 地球の管理者 cf.366
イスカリオテのユダ エルサレムの天文学者かつ予言者 漫画とは最も違う人物
首席 アスタータ50のの統治者 反乱に頭を悩ませている
ZEN-ZEN の神 cf.337/341-342/348/351 こういうキャラクタは好きです :-)
輪転王 王の王であり因縁を転ずるに自在な王 cf.427
p.422 ディラックの海
p.188 ローマでの香料について
p.375 無限の概念について
天の六欲天
四王天,トウ利天(漢字が出ません :-P),夜魔天,兜率天,化楽天,他化自在天
トバツ市(TOVATSUE) 兜率天の首都 cf.143-145
須弥山の頂上がトウ利天で、ここに帝釈天の喜見城があり
兜率天の中心に弥勒のいる摩尼宝殿がある
抄録
87
「新星雲紀。双太陽青九三より黄十七の夏。アスタータ50における惑星開発委員会は、《シ》の命を受け、アイ星域第三惑星にヘリオ・セス・ベータ型開発をこころみることになった。これによって、惑星開発委員会の存在が原住民に与える影響、すなわち《神意》の発現形式としての宗教の発生……」
153-154
「太子よ。こうは思わぬか。弥勒はその破滅の実態を知っているからこそ、そうしてたとえようもない永い永い時間を待ちつづけているのであろう。破滅の実態をよく予測し得るからこそ、人類を救済するのだ、などと言っているのであろうが。それならなぜ破滅の様相を説明しないのだろうか ? 説明したがいい。ついでに救いの方法も説いたらいい。まことの救いの神ななら実はその破滅の到来をこそふせぐべきではないか」
227
「ガリラヤのある小さな村で説法中のかれをはじめてこの目で見たとき、私はかれだけは、数多い、靴をぬいでほうれば予言者に当るといわれるほど数多い、無能ないつわりだけの予言者とはあきらかに違っていると思った。なぜなら、かれの説くのは予言ではなかったからだ。なぜなら、それは人間を不幸にすることはあっても決して幸福にすることのない性質のものだったからです」