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井上ひさし
井上ひさし対談集
笑談笑発

ガイド

対談集は人となりを映し出すのが良いです

書誌

author井上ひさし
publisher講談社文庫
year1978
price320
isbn315212-Y

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
2000.9.7読了
2000.10.20公開
2000.11.1修正
2020.2.25文字化け修正

井上ひさしの対談集であるが刊年を見れば分かるように非常に古い。そのため対談の相手もかなり時代を反映している。登場するのは暉峻康隆、矢代静一、山口昌男、松田修、D・キーン、鶴見俊輔、遠藤周作、田辺聖子、江國滋、丸谷才一の各氏。全体的に戯作についての話題が多く、後はキリスト教など彼のバックボーンとなっている部分に関連したもので構成されている感じが強い。とはいえ、なかなか読み応えのある本で、対談集のありがたさが前面に出ている一冊ということができると思う。

抄録

13

ええ、そうですよ。実に気楽に暮らしていたんですね。庶民は。庶民というのはいつの時代でもね、失うものがないからだと思いますよ。好きほうだいなことをしても、それで別に権威が下がるわけじゃないし、権威なんか初めからないんだし、財産だって職人なら宵越しの金は持たないんだし、失うものがないと腹いっぱい笑い、したいことはできるわけですよ。だからたてまえは、結婚というのは庶民でも主人か、親の命令で結婚させられるわけだけど、ほんとうの庶民というのは、元禄時代でもそうですけれども、すぐかけ落ちですね。手に手をとって知らぬ他国に行って共かせぎです。そういうのを走り夫婦(みょうと)と元禄時代はいうんです。これは何もないですからね。家屋敷があるわけじゃないし、農地を持っているわけじゃないから、何もないから着のみ着のままで、さっとどこかにいって……。(暉峻)

18

仕掛けがしてあるんですね。だからぼくは、江戸の妙味というのは、仕掛けではないかといつも考えているんですね。絵でも文章でも芝居でも、とにかく仕掛けがないとだめだという。江戸人すべて仕掛人というところが、ぼくには魅力なんですね。ただひたすらじゃなくて、何か仕掛けをしないとだめだという感じで。これがいいのです。(井上)

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