森巣博
越境者たち (全2冊)
ガイド
書誌
author | 森巣博 |
publisher | 集英社文庫 |
year | 2005 |
price | 629+tax (上巻) |
isbn | 4-08-747799-1 |
履歴
editor | 唯野 |
2006.5.31 | 読了 |
2010.6.16 | 公開 |
2010.6.16 | 修正 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
森巣博の賭博小説を読んでしまうと「カイジ」なんて、本当に子供だましというか、お子様の遊びというか、そんな感じがする。何よりも底の深さが違う。そして、その差は今の世の中の仕組みに対する批判にもつながっていく点で更に広がっている。殿山泰司っぽいというか、日本のサヨクにはできない芸当というか、とにかく完成度が高い。初期の賭博小説は必見といっていいと思う。
抄録(上巻)
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ここで、怒涛の必殺軍団(石原慎太郎とアメリカの賭博王ザ・ドナルドのこと:唯野注)が立ち向かうものとは、日本の権力構造そのものだからだ。永田町と霞が関の利権の仕組みをすべて敵に回してしまう。
二パーセント前後の「控除率」をもつゲーム賭博が公明正大に楽しめる時、いったい誰が、(レース系のごとく)二十五パーセントの「控除率」を持つ賭博に手を出すのだろうか ? 宝くじなどは、五十三・九パーセントである。-/-
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既に利権の縄張り(しま)割りが官庁(およびそれにぶら下がる族議員たち)ごとに確定している。競馬は農林水産省、競輪は経済産業省、競艇は国土交通省、宝くじは財務省および総務省といった具合に。
たとえば、競馬であれば、農水省が中央競馬会に元次官を理事長として送り込む。また主要各ポストを農水省OBで固める。これ自体は、四年ごとに一人につき退職金数千万円で天下りを回転させればいいだけで、とてつもない旨味があるわけではないのだが、日本のキャリア官僚とは、それほどバカではなかった。伊達に東京大学法学部を優秀な成績でご卒業あそばされたのでない。