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駒田信二
中国大盗伝

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書誌

author駒田信二
publisherちくま文庫
year2000
price680
isbn480-03545-7

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
2000.8.30読了
2000.9.3公開
2000.9.5修正
2020.2.25文字化け修正

例によりけりというか駒田信二氏の小品 6 つを集めた一冊。表題にもあるように構成としては盗賊を主体とした物語で全体が彩られている。しかし、私の意見としていわせてもらえば、盗賊というよりは反乱の物語、もっといえば盗むといっても国を盗むというような物語の色が強いように思う。それというのも冒頭の陳勝・呉広に始まり安禄山、朱然忠といった男たちがどんどんと登場してくるからだ。脇役まで含めれば王仙芝だの黄巣までが現れる。そして、この辺が著者の意図なのだろうが、勧善懲悪も単純なそのままの物語ではなく、必ず何らかのひねりのきいている辺りが特徴といえるだろう。また、倭人といわれる馬句田(ばこうでん)が主人公の一話などは中国史好きならばどこかに聞き覚えのある話がモチーフとなっていて興味は尽きない(cf. p136-137)。存分に楽しませてもらった。

それはさておき、本書の解説を書いている田中芳樹も似たようなことを書いているが、中国古典というものは、ある意味でとても予備知識のいることが多い。一例を挙げれば、唐や宋の時代の物語でも関羽のような武人、張飛のような豪快さというような形容の文章というのはちっとも珍しくなくて、そのくらいメジャーならばこちらも何とかついていけるのだが、大抵はもっと深い知識を要することが少なくない。まあ、多くの場合には訳者の方で便宜を図ってくれているのであるけれども、こうやって過去の故事が次の時代の物語の中に積もり積もっていくさま、ごく自然に登場する辺りは中国のドキュメントのひとつの特徴といってよいように私は思う。いうなれば、その辺に歴史の厚みを感じるわけだ。

抄録

8

鉤(おびどめ)を盗む者は誅せられ
国を盗む者は諸侯となる――『荘子』

28-30

陳勝が民心を失っていくくだり。

46-47/53/57/61/71-72/77-78

安禄山は父が粟特(ソグド)人、母が突厥人の混血だった。ソグドは今日のウズベク共和国のサマルカンドを中心とした地域で、ソグド人は商才に長けていた。一方の突厥はトルコ系の民族で 6C にその中の阿史那氏によって強大となり中国を脅かしたこともある。

その安禄山は張守珪という将軍の元で出世をし、玄宗にも気に入られ後に三節度使を兼ねるまでになる。この頃、玄宗が楊貴妃に現(うつつ)を抜かし、安禄山の唯一恐れていた宰相の李林甫が病死したことで乱を起こすことになる。河北が安禄山の手に落ちたとき、義兵を挙げたのが書家としても名高い平原太守だった顔真卿である。そして九原太守の郭子儀と名将李光弼によって安禄山は敗れていくことになる。

史思明は軍功によって将軍となった際に玄宗から名をもらったもの。元の名を史そつ干といった。(漢字がないぞう :-))