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森本哲郎
文明の旅
―歴史の光と影―

ガイド

書誌

author森本哲郎
publisher新潮選書
year1967
price400
isbn?

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
2001.4.27読了
2001.5.13公開
2002.4.9修正
2020.2.25文字化け修正

この読書ノートもそれなりの量になってきてはいるのだが、いかんせんとっくに登場していてもおかしくないはずなのに、未だに名前がないという人も多く、森本哲郎もその一人である。個人的にいうと、この人もとても読みやすい文章を書く人で、おまけに本と旅を愛するところだけ取ってみても、既に私好みということになる。一冊読むと続けて読みたくなるというか、そんなわけで 『書物巡礼記』 とを続けて読んだ。だからというわけではないが読書ノートにも続けて登場願うことにしよう。

ちなみに、本書は著者が朝日新聞記者として 1963-65 にかけ世界を旅した際の文章をまとめたものだとのことである。

抄録

13

「科学によって現象を捉え、数えあげることができても、だからといって、それだけ一層よく世界を捉えたことにはならない」と。そして、

「仮りに世界の全表面を、私の指ですっかり辿ったところで、それだけ一層よく世界がわかるようにはならないだろう」と。

15/16/17

その殺人工場は「博物館」になっていた。何万人もの生命を投げ込んだカマドが博物館になっている ! そしてその出口には売店があり、当時の惨状を復元してみせた絵ハガキや、パンフレットや記念スタンプまで売っているのだ。旅行者は争って絵ハガキを買い、パンフレットを求め、スタンプを押す。-/-

しかし、私が愕然としたのは、次から次へと観光バスで運ばれてくる観光客たちが、この殺人工場へ流れ込み、そして申し合わせたように、カマドの前で記念撮影をしてゆく情景だった。「静かに ! 死者を尊敬して下さい。いたずら書きをしないで下さい」という木札のかたわらの壁に、観光客が残して行った無数の名前。彼らは何のためにここへやってくるのか。彼らに、カマドの前で写真を撮らせ、壁面に自分の名を刻ませるものは一体何なのか。