柊あおい
バロン
猫の男爵
ガイド
書誌
author | 柊あおい |
publisher | 徳間書店 |
year | 2002 |
price | 690+tax |
isbn | 19-770088-1 |
目次
1 | 本文 |
履歴
editor | 唯野 |
2002.5.? | 読了 |
2002.7.27 | 公開 |
2002.7.31 | 修正 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
この夏のジブリのアニメ映画『猫の恩返し』の原作本。柊あおいとジブリは相性がよいのかどうか知らないが、これで『耳をすませば』に続くふたつめの原作本となる。いずれも本しか読んでいないので映像の方の出来栄えは不明だが、まあジブリだけに外れはないのだろう。
その上で、この本を読んでの感想を一言でいってしまうと「優等生的漫画」となる。(私は著者の上記以外の作品を読んだことがないので一概にはいえないが、)素材はもちろんとして、ギャグや展開、テンポに至る全てにおいてソツがない。もちろん、これはそういう全体をうまくまとめ上げてしまう手腕も含めてということであり、もっというとその点においてこそそれを最も強く感じるということを指す。これは言い換えれば、割と初めから映画化を前提に作られているということなのだろう。つまりは映画的な漫画なのである。
物語は持ち主の思いによって意思を持った猫人形のバロンとムタという自分の時間を生きる猫が、猫王の息子の花嫁にされたハルという少女に助力して、猫王のいる猫の国を中心に繰り広げる冒険譚である。実をいうと私の今の精神状態は宮武外骨を読んでいるせいで、ついさっき読み直してみると「スコブル滑稽さ(毒)がないなあ」という感じなのだが、宮武外骨と柊あおいを並べてみれば、やはりこれは食い合わせを起こす組み合わせというべきであり、如何ともしがたいというべきである。
ところで、私は全般にいって「映画が先か本が先か」といわれれば「映画を先にしたいのだが本の先になるケース」が多い。これは大抵は映画よりも本の方が完成度が高いので、先に本を読んでしまうと映画を見たときに落胆することの方が多いという持論によるのだが、しかしながら本おたくだけに本から入ってしまうという持論とは裏腹の現実を指す。もちろん、「2001 年宇宙の旅」のように例外はあるが、個人的経験則に従う限り、このようなものは一握りに過ぎない。そんなわけで私としては、先に本を読んでしまったこれらの作品が、いざ映画を見たときにどう映るか――が密かな後のお楽しみでもある。
# なお、バロンと聞いて細野不二彦の『東京探偵団』を思い出すようではイケマセン