大藤武
ケーブルを変える前に知りたい50のオーディオテクニック
書誌
author | 大藤武 |
publisher | 秀和システム |
year | 2015 |
price | 1500+tax |
isbn | 978-4-7980-4450-7 |
履歴
editor | 唯野 |
2016.2.15 | 読了 |
2016.8.10 | 公開 |
2020.5.26 | 画像追加 |
オーディオデザインという会社の人がWebに書いたBlogを書籍化した本で、ネットで検索すれば原文にも当たれる内容である。恐らくWebの文章をほとんどそのまま書籍化しているので、全体的に表記が統一されていなかったり誤記も見受けられるのだが(むろん、その程度は書籍化するにあたり直してほしいものだが)、とはいえ一般のオーディオ関係の場ではなかなか触れられない科学的な言説に基づく解説は良いと思う。少なくとも千差万別の環境かつ個人的な主観の入った耳で聞き、言葉という別の表現手段で説明された音の良し悪しよりは客観性がある。しかしながら、本書ではスペック的な数値さえもメーカーによって意図的に捻じ曲げられ客観性を失っている事例がいくつか紹介されており、個人的にはその辺が最もおもしろかった。
私も例えばネットワークオーディオでLANケーブルを変えたら音が変わるなどというのは、さすがに「馬鹿な」と思う。なぜなら、それが真実ならインターネットを含んだデータ転送でも人によって受信データに違いが出ることになり、それではネットワークの根幹が意味を成さなくなってしまうからである。それゆえ考えらえるとすれば、ケーブルではなく受け側で時系列的に問題が出てジッターが問題になるか、それも含めてエラー訂正にも失敗し結果としてビットパーフェクトが失われ後段のアナログ部分に影響を及ぼしているかだと私は思うのだが、あまりこういう話題が正面から扱われないのは残念なことだと思う。
なお、終わりの方はオーディオのガレージメーカーならではのショップやお客に絡めた話が多い。これはこれでおもしろいものの、技術的な話で最後まで突っ込んで欲しいとも思った。
抄録
9-10 cf.11
音楽鑑賞時の平均的パワーは通常1W程度です。1Wというのは、小さいと思われるかもしれませんが、通常のテレビの音量よりもかなり大きなレベルです。この条件(CDにプリアンプゲイン20dB、パワーアンプゲイン30dB、スピーカー能率90dB/W:唯野注)で計算すると、プリアンプで音量をなんと-46dB(1/200)に絞らなくてはなりません。ボリュームつまみの位置でいうと8時から9時くらいです。
このときプリアンプ内部のボリュームの後では信号レベルは0.01Vにまで落ちているのです。一般にアンプ機器では1μVレベルのバックグラウンドノイズがあるので、信号レベルの0.01Vとの比をとると、ダイナミックレンジは80dB(1万倍)しか取れていないのです。80dBはビット数に換算すると、たった13ビット分です。そうなのです。実はCDの16bitすら使い切れていなかったのです(あちゃ~)。
実際にはアナログ信号ではノイズレベル以下の音も影響するかもしれないので、ノイズレベルの1/10まで必要だとしても、それでも16bitあれば事足りていたのです。こういった事情を考えると、たとえハイレゾの24bitの音楽信号を再生しても、「かすかに音質がよくなったかもしれない」という程度で終わるはずです。これは実体験に近いのです。