穐好敏子
ジャズと生きる
書誌
author | 穐好敏子 |
publisher | 岩波新書 |
year | 1996 |
price | 650 |
isbn | 0-430467-9 |
履歴
editor | 唯野 |
2001.5.10 | 読了 |
2001.5.20 | 公開 |
2001.5.28 | 修正 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
日本人として世界で最も著名なジャズ・ミュージシャンといえばこの人だろう。私は彼女のアルバムというのをちゃんと聴いたことはないが、自伝としては十分に独立して読むことのできる内容なので心配は無用だった。
内容は彼女の生い立ちとピアノとの出会い、満州より帰国してからの音楽活動、その後の渡米・結婚・出産、その中での仕事との折り合いの付け方などを、彼女自身の音楽的なステップの飛躍に交えながら描いたものになっている。
割と自分の失敗談の出てくる辺りなどは好感の持てる書き方になっていて自伝ならではのおもしろさといえるように思う。一方、単身での渡米には苦労した面もあったに違いないのだが、直接的な触れ方をする場所はほとんどなく、そんな芯の強さが逆にプラスだったのだろうかとも考えさせられた。文章そのものに関していうと、かなり淡々とした書き方だったのが印象に残ったが、これもその人となりが出ているようでよかったと思う。
抄録
2/11
著者は旧満州の遼陽で 4 人姉妹の末っ子として生まれ、小学 1 年のときに聴いた「トルコ行進曲」でピアノに魅せられ、親にせがんでレッスンを受けるようになったとのこと。
22
-/-動物は自己の活動範囲(なわばり)を、排尿でしるしをつけて確保し、それを守るが、確保された場所には他の者は入って来ないのが常習で、たまに範囲を侵されて争いに入ってもどちらか死ぬまで闘うことはあまりないと聞いている。人間は既に確保された活動範囲では満足できず、更に優位を確保するために他に属する活動範囲をも侵略しようとする。飽くなき貪欲な征服欲のための闘いは避けられないのだろうか ? それが人間の条件なのだろうか ? ひいては国の条件なのだろうか ?
という、これは彼女の戦争観、国家観の下り。
35
-/-ゆとりのできた現在――同時に賢くなった現在――、振り返って考えると、確かに(子育てが:唯野注)厳し過ぎたと思い、娘がかわいそうでならない。また、私にとって生涯の悔み、また教訓でもあることは、子育てはやり直しができない、という絶対性を持つ現実の厳しさである。)
この反省というのは、本書の中だけでも 3 度近く記述されていて、よほどに悔やんでも悔やみきれないことなのだな...と思わせるものになっている。cf.68