アービンジャー・インスティチュート
自分の小さな「箱」から脱出する方法
人間関係のパターンを変えれば、うまくいく !
ガイド
書誌
author | アービンジャー・インスティチュート |
editor | 金森重樹(監修)、冨永星(訳) |
publisher | 大和書房 |
year | 2006 |
price | 1600+tax |
isbn | 4-479-79177-9 |
履歴
editor | 唯野 |
2016.1.4 | 読了 |
2017.2.23 | 公開 |
一読してみて概ね本書が書いていることは正しいし、多くの場面で有効だと思う。要は相手の態度は自分の取る態度で決まり、それは自分が箱に入ることで起こる、ということを説いている。そして、私自身も自分の態度を相手に応じて決めることが多い。
とはいえ、p248では
相手が箱に入っていることを責めたりせずに、しかも相手の箱の存在に気づけたなら、そのほうがずっといいと思わないか。結局のところ、こちらもときには箱の中に入ってしまうわけだから、箱の中にいるということがどういうものか、感覚的に、わかっている。さらに、箱の外にいさえすれば、箱の中にいるのがどういうことか、頭でも理解できる。それに、こっちが箱から出てしまえば、相手がひどい奴である必要はなくなり、相手をひどい奴にする必要もなくなる。だから、つらい状況を悪化させるのではなく、よい方向に持っていくことができるようになる。
という記述があるが、「箱から出れば相手がひどい奴である必要がない」という辺りは状況に依ると思う。というのも、自分が相手をするつもりがなくても理不尽なことをしてくる人間はいるわけで、そういう場合はこちらが箱に入るとか出るとかではなく、始めからスルーしてしまう方が良いと思う。なぜなら本書は「箱」という概念を用いて、そこに自分が入ってしまうと自分から問題解決の術を切ってしまうから出るべきと主張しているが、しかしながら、それで相手をコントロールできるわけではないし、それで理解が通じるかどうかも相手次第だからである。それゆえ、本書は自分に起因する問題は解決できるし、その派生で解決できる相手の問題もあるだろうが
相手に発する問題全てまでを解決できるわけではない。これは相手が自分ではない以上、当然の結果だと思う。
むろん、だからといってそのための努力を放棄していいわけではないし、そのために自分が箱に入らない努力は必要だろうが、本書でいう問題解決の限界も知っておくべきだと思った。
抄録
viii
我々がこの世で受ける苦しみは、それぞれが脈絡なく発生しているようでいて、実は複雑にからみあった糸のように相互に影響しあっていることが多いのですね。
そして、その根本の原因を作り出している発生源が、他ならぬ自分自身そのものの見方であることが人生においては存外に多いのかもしれません。
29/30 cf.31-32/70
「もっと大きな問題というのは、
自分が問題を抱えているということが、わたしには見えていなかった、という点なんだ」
哲学者はこれを、『自己欺瞞』と呼んでいる。
でもザグラム(登場人物たちの勤めている会社:唯野注)では、もっとくだけたいい方をしている。『箱の中に入っている』というんだ。
つまり、自分を欺いているときには、わたしたちは『箱の中』にいるというわけだ。
50 cf.45/56
「つまり人間は、相手が自分をどう思っているのかを感じることができる。これがポイントなんだ。
自分が相手から、なんとかしなくてはならない問題と見なされているのか、操られているのか、策略を巡らされているのかが、わずかな時間でわかってしまう。偽善だってかぎつけられる。見せかけの親切の下に隠れている非難を、感じ取ることもできる。そして往々にして、そういう相手の態度を恨めしく思う。