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郭沫若
歴史小品

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書誌

author郭沫若
editor平岡武夫(訳)
publisher岩波文庫
year1981
price300
isbnI-32-026-2

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
1999.12.2x読了
1999.12.2x公開
2001.7.30修正
2020.2.25文字化け修正

中国の古典に根差した作品を集めた短編集。老荘、孔孟などの有名な故事をモチーフにしながら、それを皮肉的な展開で裏切らせるような作品が多い。つまりは、聖人君子を聖人君子で終わらせるのではなく、聖人君子も欲や俗な面を持つ人間なのだという寓意を含ませたものが多いのである。例えば、冒頭の作品は、函谷関の彼方へ去ったとされる老子が、共に去ったとされる牛を食料にして命からがらに戻り自らの過去を責める――といった具合である。うまくはいえないが、聖俗の対比の描き方がをうまいということなのだろう。孔子や老子を生んだその中国で、一方にはこういう物語が存在する辺りに中国の奥行きの広さを感じたように思う。

ちなみに、巻末には作中に登場する故事の由来や出典が示されているので、本書は特別な予備知識がなくても特に困るということはない。また、それほど厚い本でもないので、さらりと読むことのできる本だと思う。

# この人も日本に留学しています。九大で医学を修めたとのことです

抄録

100-101

「一個の人間にとってもっとも恐ろしいのは、気がつかないということです。気がついてしまえば、救う方法はあるものです。鐘離昧将軍、お聞きなされ。貴殿は軍人です。私は文人です。しかし、我々が人間であることの標準は、ただ一つしかありません。我々は、自分を捨て、他人のためにつくさなければなりませぬ。他の人のためにつくすのも、自分を全うすることなのです。-/-