フレデリック・P・ブルックス Jr
人月の神話
狼人間を撃つ銀の弾はない 原著発行20周年記念増訂版
ガイド
書誌
author | フレデリック・P・ブルックス Jr |
editor | 滝沢徹, 牧野祐子, 富澤昇(訳) |
publisher | ピアソン・エデュケーション |
year | 1996 |
price | 2,900 |
isbn | 7952-9675-8 |
履歴
editor | 唯野 |
2001.5.24 | 読了 |
2001.10.25 | 公開 |
2002.7.10 | 修正 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
ソフトウェア工学の基本書のひとつ。というよりも変化の早いコンピュータの世界にあって、これだけ息の長い本となると数えるほどしかないように思う。仮にコンピュータ書籍から「古典」といえるものを 5 冊選べといわれても、本書が外れることはないだろう。副題が示す通り本書は原著の増訂版で(初版は『ソフトウェア開発の神話』として企画センター刊)、p218-240 は、それまでの部分の要約になっており、他にも本書の内容に対する著者自身による回想・意見なども盛り込まれたものになっている。
著者は IBM システム/360 の父として有名な人で、そのときのプロダクト・マネージャとしての経験から本書が執筆されたというのもよく知られている。また内容から見ての有名といえば、「人月の神話」と「銀の弾丸はない」が双璧となるが、反響としては後者の方が大きかったらしく、終わりの方でそのための新章が書き足されている。
個人的には本書で触れられる事柄のそれぞれが、今とでは何が違い他と比べるとどうなのか――という点で強い関心を持った。そして、読後に確信したことのひとつは「特定の技術なり何なりを過信しないこと」といえるように思う。それがエンジニアにとってよいことなのかどうかを整理するには、別の本を要するだろう。しかし、よくいえばおもしろく悪くいえばせちがらい、そういうこの世界の特徴をも示している本だとは思った。
抄録
xi/257
1970 年代のプログラム構築工程は、現状分析、概要設計、詳細設計、プログラミング、テスト、移行の各段階として行われていた。各局面はその中で完結し、局面のアウトプットである設計書の作成完了によって次の局面に移っていた。ここでいわれる外部設計とは利用者の側から見たシステム設計のことで、内部設計とは機械から見たシステム設計のことを指していた。ウォーターフォールの間違いとして各工程が 1 回だけだという仮定、全システムが同時に構築されるという想定などが挙げられている。
5-6/86
プログラミング製品(一般的なプログラムと完全なテスト)は同等機能を持つデバッグ済プログラムの最低 3 倍コストがかかる。また、同様にプログラミングシステム(インタフェースのシンタックス、コマンドのセマンティクス、リソース及びそれらへのテスト)のコンポーネントは同等の機能を持つ単独プログラムの最低 3 倍コストがかかる。また、コンパイラは普通のバッチアプリケーションの 3 倍複雑で、OS は更にコンパイラの 3 倍複雑になる。
8
プログラミングにはもちろん楽しみもあるが、苦しみの部分として以下がある。完璧性、他人への依存(悪い文書や設計の引渡しを含む)、バグ探し。