レーモン・ルーセル
ロクス・ソルス
ガイド
書誌
author | レーモン・ルーセル |
editor | 岡谷 公二(訳) |
publisher | 平凡社ライブラリー |
year | 2004 |
price | 1500+tax |
isbn | 4-582-76511-4 |
履歴
editor | 唯野 |
2009.1.31 | 読了 |
2009.2.4 | 公開 |
2009.2.4 | 修正 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
レーモン・ルーセルの奇書(?)。Amazon でエルンストを検索してみたら、お勧めとして出てきたので買ってみた本。ブルトンが熱賛したとあるように、科学者カントレルの邸宅「ロクス・ソルス荘」で繰り広げられる奇想天外な発明品の数々(だけ)を描写した物語である。
ただ、一読してみての感想は確かにおもしろいものの熱中するほどではないという感じだった。本書で描かれる発明品はカントレルが「科学者」であるがゆえに、現代では明らかに無理のあるファンタジーになってしまっているものが少なくなく、そのため刊行当初であればリアリティを持ちえたかもしれない発明品も、今では意味的に変容してしまっているものが多いように思われるからである。
一方、あとがきなどでも触れられているような著者独特の物語記法(『私はいかにして或る種の本を書いたか』などによるもの)―― 1 字違いで意味の全く異なるふたつの単語が最初と最後になる文章を作り、その文章の構成する単語を別の意味で使い、更にふたつの文章のひとつで始まりもうひとつで終わる物語、もっといえば著者の背景となる作曲的発想の文章への応用――は、フーコーが魅せられたというように一見では分からないある種の規則性に導かれたものでもある。
この手のネタとしては「猿がキーボードを打ってシェイクスピアや文学を生み出せるか ?」というような確率論を交えた話などもあるが、個人的には手法は手法であって、成果物とは分けるべきであるような気がする。物語はそれ単体として存在しているのであって、作られ方に引きずられるようなものではないと考えるからだ。となると、この手法というか言語遊戯も物語同様「おもしろい」とは感じるものの、それ以上の気持ちにはならないというか、そういう印象だった。
主要登場人物
カントレル | 発明家 |
ル・キエク | 道化師 |
コン=デク=レン | 猫 |
フォスティーヌ | 踊り子 |
ジェラール | 死者 |
リュシュス | 狂人 |
フェリシテ | 巫女 |
シレイス | 黒人女 |
ノエル | 占い師 |