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ダライ・ラマ
チベットわが祖国
――ダライ・ラマ自叙伝――

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書誌

authorダライ・ラマ
editor木村肥佐生(訳)
publisher中公文庫
year1989
price760
isbn12-201649-5

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
2001.1.1読了
2001.1.6公開
2001.2.13修正
2020.2.25文字化け修正

ダライ・ラマ 14 世の自伝。生い立ちからインド亡命までの軌跡が記述されており、巻末には年表や亡命後に起草されたチベット憲法までを含む資料的価値も高い内容となっている。政教分離が民主主義の原則という知識を持つ私から見ると、ダライ・ラマのような一個人が聖俗の両面において指導者となりえるチベットというのは、それだけでも興味深いものだ。(だから巻末の憲法でも行政権はダライ・ラマ個人にある。)また、映画にもなった高僧の輪廻転生という下りもおもしろい。チベットに対する中国の侵略は冷戦下においては政治的に大きな声となりにくい部分があったが、冷戦の崩壊した現在では、これもまた世界が抱える重要な問題のひとつなのだと思う。

抄録

19

過去にチベットを征服したのは元と清のみだった。唐の時代にはチベット側が一方的に勝ち、そのためか宋も明もチベットに介入することはなかった。そのため漢民族としてチベットを武力占領したのは、中国共産党(毛沢東)が初めてということになる。その意味において中国による帝国主義への批判は意味をなさないという指摘がされている。(中国軍がチベットに侵入し東部を占領したのは 1950 年、ダライ・ラマ 16 歳のとき。)

22-23

中国支配下におけるチベットの地図が載せられている。ラサなどの西半分が現在でのチベット自治区。北東がアムドと呼ばれる今日での青海省。東にはアムドの一部で自治区扱いされている甘粛省や四川省の一部があり、南東はカムと呼ばれる同じく四川省や雲南省の一部。

30

カルマ・ロルパイ・ドルジェはカルマ派の第四世転生者で、彼がチベットにおいて初めて認められた最初の化身者である。彼の作ったのがダライ・ラマ 14 世の郷里にあるカルマ・シャル・ツォン・リドという寺院で、ツォンカパ(Tsongkhapa)もこの寺院から仏門に入ったのだという。