ミヒャエル・エンデ
エンデ全集14
メルヒェン集
ガイド
書誌
author | ミヒャエル・エンデ |
editor | 池内紀,虎頭惠美子,佐藤真理子,樋口純明,矢口澄子(訳) |
publisher | 岩波書店 |
year | 1998 |
price | 2,800 |
isbn | 0-092054-5 |
履歴
editor | 唯野 |
2000.9.9 | 読了 |
2000.9.11 | 公開 |
2001.4.14 | 修正 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
表題の通りメルヘンチックなお話でまとめられた同全集の一冊。そんなわけで全体を通しても「ひらがな率」の高い本となっている :-) しかしながら、ひらがなの多寡と作品のおもしろさが全く別の問題であるように、そして一読すれば分かることだが本書が抜群におもしろい内容であるのは、共に論を待たないところである。さて、読後の感想であるが、最もおもしろかったのは冒頭の「正しくいうと――序文にかえて」で、他では持ち主のいない影を連れて歩く「オフェリアと影の一座」がよかった。(後者は特に終わりがすばらしいと思う。)一方、「サンタ・クルスへの長い旅」は夢見がちな少年の心を見事に描いているし(想像力のない子供などいないのだから)、エンデらしいともいえる物事の対称性にこだわったといえる「魔法のスープ」、童話的にも完成度の高い「レンヒェンのひみつ」や子供のおもちゃを巡る話など多彩な物語が目白押しとなっている。
解説で池内紀が触れているように、エンデの名前が「ende : 終」というのは、確かに興味深いことかもしれない。(ende が『はてしない物語』を書いたというこだわりなど。)単なるこだわり以上の物語の要素として、そういった「始まりが終わりで、終わりが始まり」というような部分が、確かに大きな比重を持っているように私も思うからである。
抄録
2/7/9 「正しくいうと――序文にかえて」
わたしの家族には、いちばん年をとったのからいちばんわかいのまで、みんなにおなじ、ちょっとした欠点があります。欠点というのは、「本を読むこと」です。家族のだれもがいったん本を読みはじめたらさいご、いそいでかたづけなければならないことや、それいじょうのばせない用があっても、もう、すこしの間でも本をわきへおくことができなくなってしまうのです。いえいえ、いそいでかたづけなければならないことや、それいじょうのばせない用などを、やらないというわけではけっしてありません。ただ、そのために本を読むのをやめなくてもいいんじゃないかと、思うわけなのです。あることをやりながら、もうひとつのこともやるということだって、できないわけではありませんからね。-/-
これが家族全員分の失敗談につながっていき、そして...