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ビゴー
ビゴー日本素描集

ガイド

フランス人が見た文明開化の日本

続編もあります

書誌

authorビゴー
editor清水勲(編)
publisher岩波文庫
year1986
price520
isbn0-335561-X

目次

1本文
2抄録

履歴

editor唯野
2000.9.2x読了
2000.10.7公開
2001.1.14修正
2020.8.15更新

明治期に来日(1881-1899)し当時の和洋折衷な日本の姿を書き残したビゴーの漫画(もちろん当時の挿絵的なもの)を扱った本。本書に収められているのは、鉄道・兵士・芸者・娼婦・女中のそれであるが、いずれも独特の雰囲気があっておもしろい。編者も述べているように、普通の日本人では残さないような生活の一コマや風俗の数々には、確かに逆に新鮮味がある。

よく言われることであるが、わずか 100 年前のことであるのに、我々はいかに自分の国ことを知らないことか。もちろん、それは私自身も含むのであるが、そういう意識の距離を埋める意味でも本書は意義があると思う。特に鉄道が一等から三等まで分かれており、靴を抜いで座っている乗車風景などは新鮮だった。(なお、巻末には詳細な小伝・年譜などもあり便利である。そういえば一昔前の文庫だと古典的な作品ではこういう解説のしっかりしたものが多かった気もするが、最近は珍しくなったように思う。)

抄録

10

フランス人画家ジョルジュ・フェルディナン・ビゴー(フランス人は「ビゴ」と発音する)は、明治15年1月26日来日する。21歳であった。浮世絵の世界にあこがれ、日本美術の神髄をじかに触れて学びたいと決意してやってきた彼には、文明開化の明治社会は実に奇妙に映ったにちがいない。

10-11

-/-以来、彼は18年間も日本に居つくことになる。

日本に長居するにしたがって、彼が追及するものは日本そのものをテーマに描くことへと変わっていく。そして、日本への永住を決意し日本女性と結婚する。しかし、歴史の流れは彼の思う通りには進まなかった。彼は自由民権運動や外国居留民の要求を無視して近代化へとひた走る日本支配層に楯突き続けるのである。

官憲の尾行におののき、出版物の発禁処分の不安を常に持ち続けた。権力との激しい対決の中での救いは、素朴な庶民たちとの温かい心の交流であった。その証しが、彼が描いたおびただしい数の日本人生活のスケッチである。本書は、その代表的作品である「日本人生活のユーモア Albums Humouristiques de la Vie Japonaise」全五冊の中の傑作を紹介するものである。

彼の権力との戦いは、帰国という形で終結する。-/-日本人にはあたりまえすぎて記録しなかったことが、彼によってのこされているのである。-/-