ヴァルター・ベンヤミン
ボードレール 他五篇
ベンヤミンの仕事2
ガイド
20年以上ぶりに2を読んだ...
書誌
author | ヴァルター・ベンヤミン |
editor | 野村修(編訳) |
publisher | 岩波文庫 |
year | 1994 |
price | 620 |
isbn | 4-00-324632-2 |
履歴
editor | 唯野 |
2021.2.10. | 読了 |
2021.2.10 | 公開 |
ベンヤミンの主にパリ亡命以降の文章を扱っており、書名にもあるボードレールに関する考察など彼の「パリのパサージュ論」に沿った文章を集めた選集の第2巻である。とはいえ実をいうと私にとっては、1巻を読んでから20年以上経って2巻を読んだという、いわくつきの本である。もっとも実は本棚に埋もれていただけというのが事実であるが...
ボードレール以外ではカフカ、ブレヒト、コピー可能性がもたらした「複製技術の時代における芸術作品」、実質的な絶筆である「歴史の概念について」などが収められている。個人的にはこの「複製技術の時代における芸術作品」が最も興味深かった。考えてみると私などは完全にコピーもっといえばバックアップが可能な時代に生きている人間であるから、それがもたらした影響は芸術作品どころか社会全体に対しても大きいと言わざるを得えない。既にどこかの社会学者あたりが検証しているのだろうと思う一方、これは極めて今日的な現象であると痛感させられた。個人的にはこの一篇だけでも十分に読む価値があると思う。
しかしながら、この感想は言い換えると、私はボードレールはまともに読んだことがなく、カフカも大昔に一部を読んだ程度であり、元々の素養のないものは自分にも響かなかったというところが大きい。要は勉強不足である。
抄録
13
-/-なぜなら、かれらの面前でひとびとが抱きうる唯一の希望は。かれらには賄賂が利くことである、という工合になっているのが、この腐敗の本性だからである。-/-
14
官庁の在り方と家庭の在り方とは、カフカにあっては、多様なかたちで触れ合っている。城山の麓の村では、この点に照明を当てる言い廻しが知られている。「<ここには、たぶんご存じでしょうけど、役所の決定は若い娘のように内気、という通り文句があるんです。<みごとな観察ですね>、とKはいった、……<うかがっています。ほかにももっと、何にでも共通点がありそうですね。>」それらの共通点のうちで何より注目に値いするのは、何にでも身を寄せていく、という点だろうか。-/-
16
-/-<ぼくらの世界はたんに神の不機嫌、おもしろくない一日、といったものにすぎないのだ。>――<それでは、私たちが知っている世界のこの現象形態の外部になら、希望がある、とでもいうのかい ?>――カフカは微笑した。<おお、希望は十分にある、無限に多くの希望がある――ただ、ぼくらのためには、ないんだよ。>」カフカのこの発言は、かれの作中のあの奇妙な人物たちへの、橋渡しになる。-/-