ヴァルター・ベンヤミン
暴力批判論
ベンヤミンの仕事1
ガイド
現在でも再読に値する文章が集まっています
書誌
author | ヴァルター・ベンヤミン |
editor | 野村修(編訳) |
publisher | 岩波文庫 |
year | 1994 |
price | 570 |
isbn | 4-00-324631-4 |
履歴
editor | 唯野 |
2004.4.5 | 読了 |
2012.2.15 | 公開 |
2012.2.15 | 修正 |
2020.2.25 | 文字化け修正 |
むかーし学生時代に読んだきり放ってあった本。正直にいうと当時はあまりすごさを感じなかったのだが、再読してみると炯眼だなと思わされる箇所がいくつもある。特に散文の鋭さは特筆ものではないかと思う。むろん表題作にしてもベンヤミンの生きた時代背景を負ったものなので、今の時代に読んでどうかというところはあるし、またベンヤミン自身も主義主張のすべてが体系立てられていない感はある。(というより、これは社会学的な法と権力に対する分析だと思う。)
そのため、むしろシュルレアリスムを読み解いた文章であるとか、前述したような散文のほうが個人的にはおもしろかった。同時期に『ベンヤミンの仕事2』も読んだはずなのだが、手元にはこれしかない。どこに埋まっているのやら...
# 訳文が若干固い感じがします...
抄録
3-4
-/-一九二三年の歴史的な大恐慌以降は、ほとんど無資産となり、定職もないまま、不安定な生活のなかで、文筆活動を続けていたが、一九三三年にナチがドイツの政権を握るに及んで、亡命を余儀なくされ、その生活はいよいよ危機にさらされることになる。主な亡命地はパリだった。一九四〇年、第二次の大戦でナチ・ドイツ軍がフランスに侵攻したとき、かれはスペインを経てアメリカへの脱出を企図するけれども、格別の不運のためにその企図を阻まれ、フランスとスペインとの国境のスペイン側の町ポル・ボウで、自殺と推定される死を死んだ(ママ:唯野注)。だから、約二〇年にわたるかれの文学活動は、ドイツ的な伝統に連なるユダヤ人として生涯を生き抜いてきたかれにとって、危機に続く危機のなかでの仕事以外のものではなかった。-/-
5
-/-それゆえ<根源>は、たんなる事実のみを眺める目には、捉えられはしない。事象をめぐって渦巻く根源的な歴史過程を把握する作業は、これを認識しようとする者の現在、後史としての現在の、その在りかたに、深くかかわってくる。そうとするなら、過去も過去として固定されるものではない。つまり、歴史が完成しない限り、過去は完結することがない。