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ロバート・グリーン、ユースト・エルファーズ
権力に翻弄されないための48の法則 全2巻

ガイド

権力ゲームで使われるパターンと結果を網羅した本

書誌

authorロバート・グリーン、ユースト・エルファーズ
editor鈴木主悦(訳)
publisher角川文庫
year2002
price781+tax(上巻)
isbn978-4-04-289301-5 (上巻)

履歴

editor唯野
2021.6.6読了
2021.7.16公開

本書の書名だけ見ると原題は『How to avoid harmful of the power』辺りかと思われるが、実際は『The 48 laws of power』ともっと直截的であり、実質的には『How to get or maintain the power』というのが無難かと思われる。要はいかにして権力を得るかという本であり、むろんそれが「翻弄されないための」方法に通じることも確かだと思うが、やはりちょっと違う気がする。

とはいうものの本書の冒頭に書かれている通り、現代において権力ゲームを避けることはできず、それであれば逆にそれを利用すべきであること。自分もプレーヤーの一人として立ち回らなければ、他人に駒として使われ、詐欺師のカモになることが示されており、それは全くその通りだと思う。48の法則はそれぞれに、それに従った場合、従わなかった場合、例外が歴史上の実例として示され、西洋の例はもちろんのこと三国志や日本の茶人まで登場し幅広い。また、それぞれの例に合致する箴言も併記されており分かりやすい。そういう意味ではすばらしいのだが、それでも実質的には野心家のための本というのが正しいと思う。

いうまでもなく、この種の法則を網羅しようと思えば、ある法則とは真逆の法則が示されるのも当然である。そして、歴史はその両方の実例を示してあまりない。つまるところ常に正しい答えがあるわけではないので、本書の解説でも触れているように最後の法則が「かたちあるものなどない」(流れる水の如く振る舞え)というのは、文字通り真実ではあろうが、一方でここまでくると半ば禅問答に等しい。とはいえ、権力ゲームを何も知らずに戦うのはあまりに無謀だろう。そこで駆使される法則としてどんなものがあり、自分はもちろん相手がどういう戦略を使っているか――くらいは知っておくに若くはない。そういう意味での網羅性は高いと思うので、量はあるが読み応えのある本だと思う。

抄録 上巻

8

今日、われわれが直面しているパラドックスは、かつての廷臣たちが直面していたのとまったく同じ種類のものである。何をするにも、文化的に、上品に、民主的に、公正に見えなければならない。しかし、そのルールを額面どおりに受けとって、厳密にそのルールを守りながらゲームをすれば、そこまで愚かでない周囲の者たちに叩きつぶされてしまうだろう。ルネサンス期の廷臣で、偉大な外交官であったニッコロ・マキアヴェッリが書いているように、「つねに善人であろうとする者は、善人でない多くの人びとのなかで破滅せざるをえない」。-/-

9

いくら間接的なものであっても、パワー・ゲームに意識的に加わるのは反社会的な悪いことであり、そんなものは過去の遺物だと感じている人もいる。そして、自分がパワーとはかかわりをもたないようにしていれば、このゲームから離れていられると思っている。こういう人には用心しなければならない。口ではそう言っておきながら、実はたいへんなゲーム巧者である場合が少なくないからだ。-/-

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