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#検察庁法改正案に抗議します

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権力の暴走を防ぐには緊張関係が不可欠です

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editor唯野
2020.5.16公開
2020.5.17修正
2020.5.18修正
2020.5.19修正
2020.5.20更新
2020.5.22修正
2020.5.23修正

# さすがにこれは私も声を上げないわけにはいかないので書きます。

今回の検察庁法改正案は、いうまでもなく安倍首相が「森本・加計・桜を見る会・河井前法相の公選法違反」などに関連して自身が検察からの追及を逃れるためにドサクサに紛れて提出したものであることは明らかです。そもそもコロナ渦で日本中が経済・医療などさまざまな面で大変な時期に、それを上回る緊急性と重要性がありません。いみじくも首相自身が明言した通り「恣意的人事の懸念は全く当たら」ず自身が清廉潔白なのであれば、検察を恐れる必要もなく法改正自体が不要です。

それゆえ、今回の件は安倍首相個人にとっての緊急性と重要性を、国民にとってのそれよりも優先しているといわざるを得ません。このことは、あまりに使い古された言葉ではありますが、リンカーンの「人民の人民による人民のための政治(government of the people, by the people, for the people)」を反古して「自分の自分による自分のための政治」をしていることと同義です。まさしく政治の私物化であり、時の首相が国民主権・三権分立を否定し、国民のためではなく自身の保身ために法改正を行うのは文字通り言語道断です。

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原口 一博さんはTwitterを使っています 「安倍政権を擁護する人達が「こんな非常時に野党は、桜ばっかり」とおっしゃっていました。  同じ方々が「こんな非常時に保身の法案を審議する場合か。」と何故、おっしゃらないのか不思議です。 #検察庁法改正案に抗議します」 / Twitter

言い換えれば、それにもかかわらず法改正を急ぐということは、今の安倍首相は前述の問題で検察に起訴されれば逃れられない――と白状しているようなものです。これは首相がこれらの問題に対して、まともな説明責任を果たせていないことからも明らかです。(「桜を見る会」など前夜祭のホテルの領収書を出せば済む話です。)

もっともそれ以前の問題として、内閣が検察トップの人事に介入できる時点で民主主義の理念に反しています。なぜ民主主義国家において三権分立が掲げられているのか。いうまでもなくそれは権力の暴走を防ぐために、強大な権力は分離させて互いに緊張関係を保ち相対するためです。しかるに安倍政治を象徴する「忖度」という言葉はその逆です。自分とお友達の甘い関係によって緊張感をなくし、批判を封じる代わりに見返りを与える。それを普通は腐敗・癒着と呼びます。そして、そういう政治の常態化した国がどうなるかは世界史を紐解くまでもありません。つまり、今回の法改正はこの民主主義の原則を逸脱している時点で許容されません。

もっとシンプルに言いましょう。国会議員をも起訴できる検察の人事に介入できることで誰が得をし何のメリットがあるのか。今の内閣や与党に対して汚職を捜査できる検察からの緊張感が失われるとどうなるのか。いずれの場合も、その最終的な損失を蒙るのは国民です。今回の件でどういう人たちが抗議ツイートを発し、誰が発しなかったのか。むしろ注目すべきはそこでしょう。首相の利害関係者、経済界からどれだけ抗議が出ているか、それが全てを物語っています。

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佐久市長 柳田清二さんはTwitterを使っています 「【与党内からの発言がない不健全性】 自民党にも公明党にも反対の人は、発言して下さい。 私はTwitterを政治活動で重視しています。 Twitterでここまで大きな話題になっている中で何も言わなければ卑怯なのではないかと考えました。 態度を明確にしておきたいと思います。 #検察庁法改正に抗議します」 / Twitter

著名芸能人の「#検察庁法改正案に抗議します」ツイートに対して「政治的な発言をするな」という人がいるようですが全く的外れです。有名人であろうとなかろうとひとりの主権者です。憲法で保障された思想・表現の自由の下において何を発言しようと自由です。そして、それをどう受け止めるかも個人の自由です。私は今回の法改正に反対ですが、賛成者であってもその発言自体は擁護ます。それが民主主義というものです。仮に私と同じ反対論者であっても「自分と異なる意見は気にいらないから発言するな、反対論者の意見には耳を傾けない」は民主主義ではありません。議論を避けて自分の好む意見を押し付けているに過ぎません。

この法改正が成立すれば検察の独立性が損なわれ、政治家とその利害関係者の犯罪を追及するのが極めて困難になります。必然的にそれはますます首相と与党を増長させ利権政治が幅を利かせることになるでしょう。そして、そこまでいけば次はそれに反対する人々への嫌がらせや弾圧が許容・黙認されるのも時間の問題です。なぜなら、それを追求できる検察が正常に機能できないからです。それはもう民主主義ではなく日本の香港化というべきでしょう。中国嫌いの安倍首相のやろうとしていることが日本の中国化とは皮肉にもなりません。

内閣の行なうことであっても違法であれば法律に基づいてチェックし取り締まれるというのが民主主義における法治国家の姿です。チェック機能による緊張関係のあることが重要です。その法律を変えることでチェック機能を無効化するというのは民主主義の形骸化、そして為政者の怠慢と傲慢を招くだけです。いわんや、その改正を首相が自ら言い出すなどありえません。何よりこの法改正は民主主義を大きく後退させるものであるからこそ世論も反対したのです。

# かつて中選挙区制が廃止され小選挙区制となったことが
# 今の与党一強を生んだように、この法改正はそれに匹敵する
# 戦後民主主義のターニングポイントとなりえます。
# それくらい、この問題は重要です。

# では、何が今のこの国に欠けているのかについては
# 「責任の所在のない国」をどうぞ。

2020/5/19 追記

この法改正案は今国会では断念したようですが、完全に取り下げていないので全く意味がありません。単に問題を先延ばししただけです。加えて、自公は過去にも数々の強行採決をしてきた実績があるため何の安心もできません。

とかいう以前に国民にマスク2枚配るのがコロナ対策という時点で完全にズレてますし、それを専門家に相談もせず決めて巨額の税金を投入した挙句、怪しい業者も登場、あまつさえ不良品だらけで配布自体もままならないって、これを国難、国益に反するといわずして他の言葉が見当たりません。

何というか狙ってもなかなかここまでできないような... かつて石橋湛山が山県有朋の亡くなった際に「死もまた社会奉仕」と吐いたのは有名ですが、もはやそれに匹敵するというか「内閣総辞職もまた社会奉仕」というレベルではないでしょうか。

2020/5/23 追記

法案が廃案となりました。肝心の黒川氏が掛けマージャンで辞任した途端にとは実に分かりやすくていいですね。ただ、個人的には検察幹部が大手マスコミ記者と雀卓を囲んでいたことをもっと追求すべきでしょう。ここにあるのもナアナアの緊張感のない関係です。そして自身への批判には甘いマスコミの姿です。

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